絶滅者 20

hongoumasato

小説

1,048文字

「ワタシ」は昨夜襲撃したゴリラ頭取をはじめとする銀行幹部達の粛清を決行する。

だが、その姿は銀行に設置された監視カメラに映っていた。

ニュース番組の司会者が、その報道で意外なことを告げる・・・

翌朝。

 ラッシュアワ―の駅構内。

 ワタシは、ずた袋四つを担いでいた。

 中には二人ずつ、昨夜の銀行幹部達を生きたまま入れてある。

 昨夜、残りの幹部全員の腹部を浅く刺していった。

 それから、銀行の地下に瞬間移動。

 地下には、現金運搬用の巨大で丈夫な袋がいくつもあった。とても便利。

 それを四つ拝借した。

 そして地下には、銀行の心臓・金庫があった。

 金庫を日本刀で叩き切り、中の紙幣を各袋に大量に入れた。

 総計、六億円。

 彼等への、文字通り冥土の土産。

 それから会議室に戻った。

 床でイモ虫のようにモゾモゾしながら、苦悶の表情を浮かべている幹部達九人。

 うち八人を袋に詰めた。

 体の大きい望月だけは、袋に詰められなかった。

 だから、窓から投げ捨てた。

 会議室は六階にある。

 望月のその後は、推して知るべし。

 ラッシュアワー時の駅構内でも、八人の男達を担いだワタシはステルスのお陰で、誰とぶつかるでもなく移動できる。

 電車が入ってきた。

 凄まじい轟音が速度と、何より圧倒的な破壊能力を物語る。

 ワタシは袋の中のゴリラに、テレパシ―で話しかけた。

「(アンタにも音が聞こえるでしょ? アンタ達がクビを切った行員の中には、電車に飛び込んだ人も沢山いる。その人達の気持ちを想像できる? 無理よね。でも、部下の気ちを理解できる人間が本当にいい上司よ。だから、実際に体験させてあげる)」

 ゴリラが袋の中で何事か喚いている。

 ワタシは、ステルスを解いた。

 ワタシと巨大なずた袋四つの出現で、何人もの人間が吹き飛ばされる。

 だが、無関係の人間達が線路に落ちないよう、配慮は欠かしていない。

 ワタシはずた袋を、走りこんでくる電車めがけて放り投げた。

 凄まじい勢いで走りこんでくる鉄の塊が、ズタ袋を引き裂く。

 一瞬、中の人間と金が露わになった。

 だがすぐに、ゴリラやネズミら八人は、電車の下に入り込んでいった。

 ミキサーにかけられたトマトのようになっているだろう。

 幾つもの甲高い悲鳴と怒声が飛び交う。

 紙幣だけが、静かに宙を舞っていた。

 

 もはや、ワタシの破壊を止められる者など誰もいない。

 地下金庫には隠しカメラがあったらしい。

 ワタシはばっちり撮られていた。

 朝から全国のニュ―ス番組でワタシの姿が放送された。

 あるニュ―ス司会者が、

「この少女の正体が判明しました! 先月、一家心中未遂をおこし、搬送先の病院から突然行方不明になっていた藤堂さん一家の長女で……」

 まただ!

 何で皆「未遂」というのか?

 ワタシの家族は一家心中した。

 現に、地獄にいたではないか!

 これだけは、どう考えても答えが出ない。

2019年2月18日公開

© 2019 hongoumasato

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

この作者の他の作品

この作者の人気作

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"絶滅者 20"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る