絶滅者 23

hongoumasato

小説

3,179文字

十二才の教え子を犯して妊娠させ、自殺させた疑いのある教師・山崎。
かつてPTAの会合で、華麗なトークショーで保護者達をけむに巻くことに成功しかけたが、
「ワタシ」の母がそれを遮った。
だがその一件で、母は狂った者と噂され、山崎はのうのうと教師を続けていた。

「ワタシ」は山崎の部屋で、彼が異常なロリータであり、
かつて母が指摘したとおり、教え子を妊娠させて自殺させたことを把握する。

「ワタシ」は山崎を粛清し、全ての児童買春者達に宣戦布告する・・・

液晶画面に映っていたは、ワタシより幼い少女の全裸。

 

やはり母は正しかった。

 

PTAの会合で、見事な演技で生徒妊娠をかわした男性教師。

 

ワタシ今、その教師・山崎のアパートの部屋にいる。

 

姿は消して。

 

山崎は変態で、唾棄すべき男だ。

 

先程、部屋の中を探索した。

 

山崎は、少女のポスターを貼るような愚は犯さない。

 

誰がいつ部屋に来てもいいように、だ。

 

しかし、クローゼットの衣装ケースの奥には、まだ十才にも満たない少女達の全裸の写真集が整然と並んでいる。

 

ロフトのベット下には、山ほどのロリータもののDVD。

 

トイレの天井板を外せば、山崎が児童を犯している写真が何枚もコレクションされている。

 

山崎は悪知恵の働く男だ。

 

それら児童ポルノを、海外のサーバー経由・不正取得したIPアドレス・フリーメールのアドレスを使って、ネットで購入していた。

 

商品は全て、郵便局止め。

 

実際に少女を犯す時も、そうしたサイトを利用した。

 

売る側も買う側も、お互いに顔を合わせずに済む。

 

もしワタシがヤクザの手中に落ち、児童買春を行う羽目になっていたら……この醜悪な男に犯されていたかもしれない。

 

全身に鳥肌が立ち、腹の底からマグマより煮えたぎる怒りが込み上げる。

 

液晶画面で、虚ろな表情をした全裸の少女達。

 

それを山崎は狂気の眼差しで見ながら、マスターベーションしていた。

 

ワタシは吐き気を催した。

 

交番で六発撃たれた時より、気分が悪い。

 

必死になって、自分の醜い分身を擦り上げている山崎。

 

その後ろに立った。

 

山崎の頭上から、彼が少女を犯している写真の全てを、ヒラヒラと落とす。

 

ギョッとした山崎が振り返る。

 

片手は、醜く不潔な分身を握ったまま。

 

「ご無沙汰しています、山崎先生。PTAでは、母がご迷惑をおかけしたそうで」

 

冷たい目で見下ろすワタシ。

 

日本刀はステルスで消してある。

 

「と、藤堂……!」

 

驚愕する山崎。

 

ここにワタシがいることに。

 

そして報道で、ワタシが危険人物であることを知っているから。

 

「やっぱり、母の方が正しかったね。学校では紳士面しておいて。先生、理科の教師でしたよね。どうでした、実験準備室で、一二才の教え子を犯すのは? それはそれは、刺激的だったんでしょう?」

 

無表情になる山崎。

 

目に何の感情も宿っていない。

 

彼は狂気に取りつかれている。

 

この狂人に犯され続けた少女の気持ちに、思いを馳せた。

 

死後の世界にいる少女の魂を、ワタシの内側に呼び寄せた。

 

「……せ、先生、や、やめてくだ……さい。お願い……やめて。痛い……痛いよう……」

 

ワタシは泣いていた。

 

少女の恐怖と哀しみにリンクしたから。

 

無残な仕打ちを受ける少女の「イメージ」が、ワタシを支配したから。

 

少女は何度も犯された。

 

やがて、妊娠を悟った。

 

絶望した。

 

そして校舎の屋上から身を投げた。

 

家族と、お腹の子供に「ゴメンね……」と謝りながら。

 

そこで少女の魂は、ワタシから抜けていった。

 

行き先は地獄だ。

 

事情に関係無く、自ら命を絶った者は地獄に送られる。

 

母と同じ、絶望の岸壁にいる。

 

山崎は下半身を露出させたまま、息を荒くしていた。

 

目が血走っている。

 

狂気の炎を隠そうとしない。

 

「可愛がってやったんだ! アイツも幸せだったんだ! 俺は大事に大事に、大切に大切に愛した。あの 汚れの無い綺麗な体……透明な肌! 純粋な瞳! 俺に犯されることで、さらに増す輝きぃーっ!」

 

山崎が突然襲ってきた。

 

ワタシと、自分が犯した少女を重ね合わせている。

 

ワタシは日本刀を一振りした。

 

山崎の動きが止まる。

 

自分の身に何が起きたか、理解できないらしい。

 

山崎の視線が、ゆっくりと下がっていく。

 

そこにあるはずのモノが、無かった。

 

先程まで、自分が握り締めていたモノが。

 

それは床に無様に転がっていた。

 

山崎は絶叫した。

 

股間から迸る流血がそれに拍車をかける。

 

ワタシは刀をもう一度一閃させた。

 

それで、山崎は沈黙した。

 

高給アパートとはいえ、山崎の断末魔の叫びは全ての部屋に届いただろう。

 

時間が無い。

 

ワタシは、あらかじめ準備したデジカメを取り出した。

 

 

児童ポルノ関係者――変態ども。

 

今夜から、アイツらは全員震えて眠る。

 

ワタシはデジカメで撮った写真と動画を、ネットで流した。

 

流した映像――山崎が生徒を犯している写真。

 

そして山崎の汚らわしいモノと精巣。

 

さらに――ワタシの顔。

 

最後にメッセージ。

 

「全ての変態どもへ。今後も少女を汚せば、次にネットで流れるのは、お前達だ。山崎と同じくパーツ解体して」

 

それでも、児童ポルノは根絶されないだろう。

 

彼達のその趣向は、不治の病。

 

死の恐怖すらも、彼達を止められない。

 

性犯罪は「魂の殺人」。

 

なのに、彼達への量刑は軽過ぎる。

 

被害者の心の傷が癒えるよりも先に、加害者が社会に放たれる。

 

そして児童買春を行う者は皆、少女自身も喜んでいると信じて疑わない。

 

厄介で、そして「絶滅」すべき連中だ。

 

 

ネットで顔を流したのが決定打となった。

 

ワタシは、マスコミと警察に追われる。

 

メディアは連日、ワタシを取り上げた。

 

彼達はワタシの破壊を、凶悪な少年・少女犯罪の一環と見なしている。

 

“有識者”とかいう連中達がこぞって口にする「現代少女の心の闇」。

 

闇?

 

ワタシは明るい所にいた。

 

暗闇に引き込んだのは、お前達人間じゃないか。

 

 

遂に、本物の戦争が始まる。

 

これまでの破壊は容易だった。

 

だが、これからは違う。

 

まず、警察。

 

血眼で自分を追っている。

 

巡査は拳銃を全弾発砲した。

 

鑑識の結果、全弾ワタシに命中したことは把握しているだろう。

 

それでも巡査は、真っ二つにされた。

 

警察は警官殺しを絶対に許さない。

 

逃せば「警官を殺しても捕まらないのか」と思い込んだ悪党どもが、次々に警官を殺戮するから。

 

警察の包囲網と戦闘準備は整っている。

 

機動隊にある特殊部隊も臨戦態勢のはずだ。

 

ワタシが一二才の少女とはいえ、もう容赦はしないだろう。

 

 

警察以外の組織も侮れない。

 

すでに自分の顔は知れ渡っている。

 

関わりのあった者。

 

ワタシに復讐される覚えのある者。

 

全員が、迎撃の準備を終えているだろう。

 

だが、ワタシは戦う。

 

どんな重武装の相手でも、破壊し尽くす。

2019年2月19日公開

© 2019 hongoumasato

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