対決
油田はちくわの頬を両手ではさみこんでゆさぶりながら咆えたけった。
「サイコーでしたよ。ちくわさん!」
ゆさぶりほとばしったちくわの返り血。その飛沫をちゅるりと舐めてくちびるはぬらぬら光り、吐き散らす血の混じったあぶく状唾液をつるつるしたたらせる油田はもはや完全にモンスター。
「ほれあ」
なにがなんだかわからぬままちくわは反射的にヘッドバッドを一発くらわせてから横っ飛びに吹っ飛んで油田から距離をとった。
「うぉいちょいまてまて。どういうことだおい」
いきなりのヘッドバッドは予想外だったか、それでも油田は余裕のペコちゃんスマイルを崩さずにへらへら笑ってよいこらせいとあぐらをかいた。へにゃった男根はそのままに全裸でちくわを見据えている。よく見ればなかなかの筋肉質の男であり、目玉も黒ずんだ乳首もつんつんしている。
「どういうことだっていわれてもこういうことですよ。いくらオレがアホでもさすがにこんなトコロまでひょろひょろついてくるはずないじゃないスか。いい加減にジョーシキ、ゆうやつを身につけるべきですね。ともかくサイコーの気分でしたよ」
「おいまて。お前さっき埋めたって言ったな。お前が四ッ野を埋めたのか」
「そうっスね。オレが四ッ野を埋めたんスね」
「埋めたっていってもいろいろあるだろ。こういうTarouやトメみたいな埋め方だったのかよ」
「ちくわさん。こんなトコまで来て、ちくわってる場合じゃないっスよ。こんな生っちょろい埋め方してどうすんですか。思いっきり息の根トメルご臨終系コースで埋めさせて頂きました。ごっつぁんです」
油田は合掌した。
「ははは。なぁ。ここらでしょうもないネタはやめようぜ。こんな妙ちくりんな砂浜でお前は全裸でおれ達は金もないし血まみれでふらついてるし、おれの名前はちくわだし。やっとこさ埋めたトメは穴から這い出しそうだし、もうじゅうぶん。おなかいっぱいだ」
「いやー、オレとしてもネタだったらいいんスけどね。どっこい事実は動かざるもの。そろそろオレとしてもこういうちくわ的な漫遊紀は終わりにしようと思ってたんスよ。中ボス二人も片付けたって感じで、ちょうどいい頃合じゃないスか。じゃあこれでもどうぞ。はいよと」
油田が放り投げ、ちくわのぷっくら下腹にぽむりとあたって砂上に落ちたは、ちくわと四ッ野がまだ知り合ったばかりの頃、さゆりんに捧げる「毛の誓い」として互いのケツ毛で交互に縫いこんださゆりんの肖像が収められたロケットだった。二人は命果つるまでこのおそろいのロケットを肌身離さず持っていることを誓いあったのだった。ふざけていたちくわもこれを見てちくわなりに本気になってきたらしい。
「オニクのコアが発熱しはじめている」
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