釣崎清隆の最新写真集刊行を記念した写真展『THE LIVING』が、東京都新宿区の新宿眼科画廊で2月8日まで開催されている。

世界の各地で「死者」を撮り続けて来た写真家・文筆家の釣崎清隆の最新写真集『THE LIVING』が、この度東京キララ社より刊行されるのを記念し、新宿眼科画廊で写真展『THE LIVING』が開催されている。アジア、中南米、そして日本の樹海など、世界各地で人間の「死」を撮影してきた釣崎清隆だが、この写真集及び写真展では人間のその反面といえる「生」について取り上げている。

それは、私にとって主戦場である死体現場の舞台裏であり、なおかつ「生と死」という世界総体の膨大で最重要な半分である。
この作品集は『THE DEAD』と対になるアンソロジー、私が撮った死体以外の写真の集大成である。
つまり、この作品集によって私の世界は完結する。

(「THE LIVING」序文より) ※新宿眼科画廊の概要ページより引用

写真集『THE LIVING』の刊行に際しクラウドファンディングが行われ、筆者(髙井ホアン)もささやかながら支援を行った。今回、写真展に向い、在廊中の釣崎清隆氏から写真を前に様々な話を伺うことができた。

メキシコのサパティスタ運動(先住民を主体とした反体制運動)が日本で急速に忘れ去られ、メキシコと言えば「麻薬戦争」ばかりが取り上げられている現状への思いや、普段容易に姿を見せない「マルコス副司令官」(サパティスタの実質的指導者)を撮影した時のエピソード、また裸足で暮らす現地の女性の姿など、数々の興味深い話を伺い、一枚一枚の写真に込められた思いやその過程を知ることができた。また、来場者の中には親子連れの姿もあったが、子どもに対しても真摯に写真への思いを語る姿が印象的だった。2011年の東日本大震災や、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を取材した写真も展示されており、現在の活動についても知ることができる。

新宿の歌舞伎町に近い堅苦しくない空間で、死と生について触れられる、またとない機会の写真展『THE LIVING』を、この機会に是非観覧したい。

写真展『THE LIVING』は、新宿眼科画廊で2月8日まで開催されている。開場時間は12:00~20:00(水曜日~17:00、木曜日休廊)。入場無料。会場では写真集『THE LIVING』も展示・販売されている。

また、2月13日から19日まで、釣崎清隆の写真も展示予定の「私たちは消された展2023」が千代田区神保町のCreative / Art Gallery CORSOで開催される。