タグ: 死 45件

  1. でぶでよろよろの太陽  (7章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,249文字

       (7章の3)      翌日、点滴注射を受けているときに沢田が来た。腕の血管に取り付けた管にセットした大型の注射器を、医師が親指でゆっくり押す。赤味がかった液体が管を伝ってわたしの中に入っ…

  2. でぶでよろよろの太陽  (7章 の4) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,121文字

       (7章の4)      わたしはまた、ふと思いだす。以前に一度、夕日を見つめていて思ったことを。    もしかしたら自分は死ぬとき、夕日を見たくなるのではないだろうか。きっと死ぬ間際になっ…

  3. でぶでよろよろの太陽(8章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,499文字

       (8章の1)      わたしはずっと歩いている。「汗よ乾け」と念じていないので、全身汗まみれだ。この時代のシャツは吸水力が悪く、流れ落ちる汗でパンツまでもベトベトになっている。    小…

  4. でぶでよろよろの太陽(8章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,690文字

       (8章の2)      こんなにも感覚や意識がしっかりしている世界が夢だというなら、もしかしたら、現実の世界だって夢なのではないだろうか。わたしは自分の末に、一縷の希望を持った。このあと間…

  5. でぶでよろよろの太陽(8章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,835文字

       (8章の3)      田んぼの向こう、遠くに稜線がある。しかし黒い雲と繋がり、稜線との境目がなかなか判別できない。凝視して、多少薄く見えるところから雲だと、かろうじて分かる程度。雲は昼間…

  6. でぶでよろよろの太陽 (9章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,597文字

       (9章の2)      バスがやってくるまでにかなり待たされた。これはわたしが、「バスがすぐに来る」と念じなかったからだ。田舎のバスは本数が少なく、長く待たされるのが当たり前なのだ。特に念…

  7. でぶでよろよろの太陽 (9章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,229文字

       (9章の3)      わたしは結局独身のまま30代を通り過ぎた。あの時に思い描いた年齢をとっくにすぎているのだ。しかしそれが、どうも実感としてわかない。    現在のわたしは、もう40代…

  8. でぶでよろよろの太陽 (9章 の4) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,875文字

       (9章の4)      調度品などない玄関で殺風景そのもの。モルタルの壁にはひびが稲妻のように走っている。靴箱は埃まみれで、手前に傾ければ砂利がざっと落ちてくることだろう。もうちょっとマシ…

  9. でぶでよろよろの太陽 (9章 の5) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,216文字

       (9章の5)      一部屋ずつ運ばず、そろって食事をさせるのは手間をかけたくないからだろう。みすぼらしい安宿のやりそうなことだ。    おかずがまた貧弱だった。肉類、刺身類はなし。揚げ…