移民問題に対する批判意見について

世界の存在と人間について(第8話)

山雪翔太

エセー

1,069文字

白鳥類は、最近活発に議論されている移民問題……その批判意見について語る。

 この国が、自国民に対して直ぐに生活保護を出さずに、移民に対して直ぐにそれを出していると言うのなら、明らかに問題だ。この国に住む以上、この国の国民として扱わなければならない。そこに不平等があってはならない。

 ただ自分が言いたいことは、「𓏸𓏸人はこの国から出ていけ!」というついでに、「𓏸𓏸人は馬鹿、殺したくなる、クズ民族、この地球からいらない」と言う者が居るのが問題だ、ということだ。……これらの罵詈雑言の差別発言の数々は、全て実際に私がSNS上で確認出来たものだ。

 この問題について挙げるなら、やはりあの痛ましき中国の日本人学校に通っていた日本人の男の子が中国人に殺された、という事件を取り上げなくてはならないだろう。

 ただ、これについて取り上げる場合も、私の言う事は変わらない。「その事件を起こす𓏸𓏸人が悪いのであり、𓏸𓏸人全体が悪いのではない」ということだ。

 近年は、移民反対の意見と、人種差別の意見が曖昧になっている。皆、人種差別という憎むべき行為が起こした数々の悲劇を忘れかけているのではないだろうか? それとも人々が心に余裕を無くしただけか? 私には判断しかねる。

 𓏸𓏸人はこういう事をする民族だ……という時代錯誤な意見は即刻捨てるべきなのだ。近年、特にTwitter上ではこの人種差別がマジョリティになっており、皆がそんな大量に流れてくる人種差別的発言に触発されているのだ。

 人種差別の果てにあるのは何だ? 簡単だ。戦争、ホロコースト、殺人……。

 例えば、君が外国人を電車の中で見た時、どう思うだろう? 心の奥底でこう思ってはいないだろうか? 「うわ、𓏸𓏸人だ、離れよう」と。その思考にこそ、人種差別の萌芽が隠れているのではないだろうか。

 どうか、今一度冷静になって考えてくれ。仮に日本人が他国で殺人事件を起こしたとしよう。そしてそいつが、「𓏸𓏸人が憎くて殺りました」と答えたとしよう。これで君達が「日本人は馬鹿、殺したくなる、クズ民族、この地球からいらない」とその国の人達に言われたとすれば、君達はそれを肯定出来るのか? ……この立場を、今君達が人種差別をする彼等は味わっているのではないだろうか?

 それよりも私がもっと怖いのは、今日本人が憎んでいるとされている国で、実際に先程の仮定と同じ様に事件が起きれば、その犯人を国民は「英雄」扱いする事だ。……有り得ないだろうか? 私には容易に想像出来てしまう。

 もっと移民問題について冷静に考えるべきだ。そして、移民受け入れ反対と人種差別を区別しなくてはならない。……人種差別による悲劇を、二度と起こさない為にも。

2024年9月27日公開

作品集『世界の存在と人間について』最新話 (全8話)

© 2024 山雪翔太

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