ドッキドキ・アホメール

ヘルスメイク前健

小説

555文字

2008年作。『唇は赤ければ赤いほど赤い』収録。

Kという私と同輩で男前の友人がいる。

こないだにKからメールが届いた。

「先日、キミの頭がおかしくなった夢を見ました。そして頭がおかしくなったキミと一緒にイギーポップの演劇(音楽ライブじゃなくてなぜか演劇)を観に行きました。

イギーポップは実はネカマでした。

イギーポップがステージの床に這いつくばって『フーッ』と息を吹くとステージから客席に一直線に染み込ませてあったガソリンに引火し客席が爆発して床が抜けました」

……蓋し名文である。だが、少々気になる部分がある。私の頭がおかしくなった、というのが。

「夢は逆夢」なる諺で自身を慰めてみたものの、私が発狂した夢の存在になるものは、どうにも禍々しい。

それにしても、イギーポップとは何者ぞ? 一九七六年版の世界大百科事典で調べてみたが、掲載されていない。Kはパンクロッカーだから、そっち方面の人物かもしれない。

とりあえず、私はどうすれば良いのかを問うメールを送った。直ちに返信が来た。

「イギーポッペに全てを委ねるしか道はないと思います」

イギーポッペ? 何だ? その変化は?

私は、Kに返信。

「夢なんて見るもんじゃない、語るもんじゃない、破れるものだから」と。

二分ほどしてKから返信。

「夢を書き留めておくと精神に支障をきたすのでご注意ください。破れぬ夢の中で破れぬ夢に閉ざされて……」

2023年3月28日公開

© 2023 ヘルスメイク前健

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