その人は普通の人に見えた
いつもラブホテルのエレベーターに乗るとき私はドキドキする
そう、妙に薄暗い照明の入り口、好きな部屋を選ぶためにある部屋の写真のパネルが全て消えていたり、フロントのお兄さんのそっけなさ‥全てが私にネガティブなドキドキ感を与えてくる
「 ‥ 」
「遊びたガールです」
「981号室」
‥怖かったりする
全ての状況が恐怖心を煽るのだ
非常口も見当たらない廊下にただ赤く点滅するルームナンバー‥
ノックする手を躊躇する
それでも部屋の扉をノックしなければいけない‥
「こんにちは!」
ドアが開いたらもうそこは2人だけの空間なのだから‥
“怖い”とかそういうモノはもう一切考えない
「こんにちは」
そこにいたのは薄ピンク色のポロシャツに茶色のパンツを穿いた“普通”のおじさんだった
そこで初めて私はほんの少し安心する
部屋のテーブルの上には携帯電話と車のキーに財布、それと遊びたガールの会員証が置いてあった
「 ‥ 」
椅子のところに白い紙袋が置いてある
その白い紙袋は真新しく‥
‥何となく怖かった
「 ‥ 」
おじさんは無口であまりしゃべらない人だった
「何か飲む?」
「あ、じゃぁウーロン茶を」
おじさんが自販機のボタンを押したとき、見えた手の傷が‥
「これね、転んじゃってさ」
っておじさんは笑いながら言ったけど‥
その手の傷は深く手首を切ったような傷だった
「 ‥ 」
さっきの私が感じていたネガティブなドキドキ感がよみがえる
「おじさんのこと、気持ち悪いかな?」
「そんな‥」
言葉が続かなかった
「‥僕は君の眼にどう映ってるんだろうね」
って言って、おじさんはやっぱり笑った
「僕はね‥君みたいに素直な子は大好きなん
だ」
おじさんは白い紙袋から縄を出した
あの白い紙袋‥怖かったはずだ
「‥痛くしないから、ちょっと縛らせてくれ
ないかな?」
“嫌”だと言いたかった
何故私がこんな目に合うのだろうとも思った
こんなことで涙は流したくない
“縄”で縛られたくもない
おじさんはまず私の手首に縄をかけて縛る、そして足首‥身動きをとれないようにする
出来上がったモノは人形のような私だ
「あ、汗をかいているね‥」
おじさんは私の首につたう汗をおいしそうに舐めた
「 ‥ 」
「おいしいな君の味がするよ、君のこの匂い
もいい‥消毒の匂い‥ボディソープの匂い
‥独特のあの匂い‥汗の匂い‥君の匂い‥いいなぁ‥ものすごく欲情するよ」
私はどんどん縛られていった
「僕はね、セックスはしないから安心してい
いよ‥ただ君を縛って、汗と唾液と愛液を
舐めるだけだから」
私の口はもちろんガムテープで塞がれていたし‥おじさんは服を一切脱がなかった
私を縛ってただ私を舐めるだけ‥
なのに‥おじさんは90分の間に5回はイってた
私のアソコが濡れるたびにイってた
「 ‥ 」
そう私もおじさんがイクたびにイっていた
「君の愛液はまた格別だね」
「 ‥ 」
「また指名する、逢いにきていいかい?」
おじさんは喋れない私にそう言った。
end
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