ともだちみたいな親子

かきすて(第10話)

吉田柚葉

小説

2,145文字

目がさえて眠れないので書きました。ぼちぼち寝ます。

土曜出勤を終えて帰宅すると、家はもぬけのからだった。私は缶ビールをあけた。つまみがなかったので茶づけをつくった。

スマートフォンにおくられて来た妻からのショートメールによればふたりはディナーに行ったらしい。私はつい先日ガラパゴス携帯からスマートフォンに機種変更したばかりで、コミュニケーションアプリのたぐいはまだひとつもインストールしていない。なにを食べるとも書かれてない。いまごろ娘のインスタグラムには料理をかこむふたりの写真がいくつもアップロードされているはずだ。

「ともだちみたいな親子ですね」

というのは、どこのだれとも知らないが、どの写真にもつけられるコメントだ。人気インスタグラマーには、血のかよっていないうすい賛辞があつまる。

テレビをつけた。野球がやっていた。興味がなかった。ただぼんやりとそれをながめた。

――理解がないのよ。うちのは理解がない。

と妻は言う。

――うちもよ。

右隣に坐っている女が共感した。うちもうちもと波が立つ。

2020年11月8日公開

作品集『かきすて』第10話 (全40話)

かきすて

かきすては2話、14話、24話を無料で読むことができます。 続きはAmazonでご利用ください。

Amazonへ行く
© 2020 吉田柚葉

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


5.0 (1件の評価)

破滅チャートとは

"ともだちみたいな親子"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る