わたしは、悪い人間でしょうか?
おや、きみは良い人間だと?
そんな、良い人間だなんて畏れ多い。
というと?
悪い人間ではない、と思うのです。
では、中途半端な人間ということで。
なぜです、なぜそんな意地悪をいうのです?
意地悪?
ええ、真剣に話しているわたしをからかったでしょう。
からかうなんてとんでもない、至って真剣ですよ。
やっぱり。
真剣ですよ。
嘘はいいです、あなたの嘘はもう飽きました。
きみはさっき、自分が悪い人間か聞きましたよね。
ええ、あなたは下らないと思っているみたいですけど。
なぜです?
答えをだしてくださらなかったもの。
違います、なぜ聞きたいと思ったのかですよ。
それは、色々あるからです。
おや、これまた抽象的な。
構いません。
きみの質問は抽象的すぎるのですよ。理由もまた然り。
なんです、説教ですか。
いいえ、真剣に答えるにはきみの心を知らなければと。
やっぱり。
ああ、はじめから真剣ではありますがね。
不安になったのです。
将来に?
分かりません、何が不安なのかまでは。
それではぼくが、不安になりますね。
ただ、わたしが間違った人間のような気がしてならないのです。
ほう、興味深い。
なんです、興味深いなんて。
そうひとつひとつに反応しなくても、良いのですよ。
申し訳ありません、悪い癖だと自覚はあるのですが。
気になって仕方がない、と?
ええ、相手の心を先読みしては突っかかり。
相手の言葉や視線の真理を知りたくなる?
ええ。
それで、きみは何を望んで何を得たのです?
わたしへの悪くない印象と、よく分からない不安です。
全く、期待はずれだったのですね。
もう少し、上等なものを。
そうか、きみは悪い人間だ。
え?
きみの相手は、鏡だもの。
急に、どういうことです?
写し鏡ですよ。
それは今、関係ないでしょう。
きみ、相手にまず否定的ですよね。
そんな。
きみが相手を否定的に見る限り、悪いままですよ。
話が見えないのですが。
きみがまず相手を受け入れなくちゃあ、相手も受け入れないということです。
ああ、よく言う人間関係は写し鏡ってことですか。
ええ、まさに。
月並みな助言、感謝致します。
おや、また機嫌を損ねてしまいましたね。
ええ、まったく。
ぼくは、きみの鏡なんですからね。
あなたは、わたしの鏡ですものね。
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