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ナガミヒナゲシ

大川縁

ある年ナガミヒナゲシが大量発生しまして、借家を取り囲むように咲き乱れまていました。千川沿いやご近所にもありましたが、比べ物にならないほどの群生でした。

タグ: #散文詩 #自由詩

375文字

小金井市で借りた平屋の庭一面に、ナガミヒナゲシが咲いた。

帰化植物で雑草として近所でもよく見かけるのだが、

車二台は入る庭をオレンジの花弁が覆いつくす光景は見事だ。

通りを保育園児が散歩しに来て、連れていた保育士が「ほら、きれいだね」って

園児にオレンジ色を伝えている。

褒められた花弁は、風に吹かれて揺れるだけ。

 

やがて花は枯れ、種子の時期が訪れる。

ナガミヒナゲシは弾けるような音をたてながら、

種子を飛ばし始めていた。

縁側から眺めていると、種子の絨毯を踏んで歩く野良猫の姿が。

野良猫はもうすぐやってくる冬に、くるまる毛布を探しているのだろうか。

 

次の年に、また庭をナガミヒナゲシが敷き詰めることはなかった。

瞼の裏に焼き付いている、あの見事なオレンジ色の花弁で

通りすがりの人の目を惹いていたのが、まるで昨日のことのように思える。

 

© 2016 大川縁 ( 2016年10月25日公開

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