あなたはひとりで

大川縁

510文字

この世界でひとりぼっちになってしまった時のことを考えてつくった詩です。表現は極力直球にして、素直な気持ちをそのまま書きました。相変わらず暗いかもしれませんが、結構ポジティブにやろうと頑張りました。しかし、それが反映されているとはかぎりませんのであしからず。

 

 

この世界で、あなたがたったひとりであるなら、

外灯の温かな光を追って、じきに見えてきた街の

街道やビル窓に映る人影のような過去の姿を求めて、

さ迷い歩くだろうか。

環状八号線に乗って、工場の横を抜け

交差する街道、また街道に目が眩みながら、やがて

空港の灯りを眺めているのかもしれない。

あれだけ嫌で仕方がなかった人らが

いなくなってしまった理想の中で、こうして

自由気ままに放浪しているはずなのに

どうしてあの人らのことばかりを思い出しながら、

次の灯りを探しているのだろうか。

 

人に描けるものは、人の見るものだけなのか

艶のある弦の、弾かれた乾いた音が、月夜に響いた。

古人はこうして琵琶に身を預け、

その身ひとつで渡り歩いた者もいたという。

物悲しい声は、寂れた恫喝を含み、

聴き手を語りの中へ引き込んでいく。

やはり人は、どこかで人の影を追っている。

それは幾千年の連鎖を絶やさなかった、

たしかな感触で、その喉から発せられる。

 

あなたはひとりで、街に残された最後の人として

ひとつひとつの灯りを消していくだろう。

その温かな灯りに映し出された、眩い記憶に

心を奪われながら。

 

 

 

2016年10月9日公開

© 2016 大川縁

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