2016年7月23日(土)より、北海道旭川市・三浦綾子記念文学館で『三浦綾子と光世の書斎』展がはじまっている。病弱だった三浦綾子は自分で原稿を書くことが難しく、夫・光世が文章を聞き取って書き起こす<口述筆記>スタイルで有名だった。今回の企画展では、その口述筆記の現場となった書斎の模様が再現されているのが目玉だ。

口述筆記以外の面でも、三浦綾子の作家活動には夫・光世のサポートが欠かせなかった。たとえば、三浦の本格的なデビュー作であり大ベストセラーとなった『氷点』のタイトルを考案したのは光世だったし、十勝岳噴火をモチーフにした『泥流地帯』のアイディアも光世によるものだ。文字どおり二人三脚で執筆を続けた夫婦だったといえるだろう。

会場では、畳3枚の上に実際に使われた長机や座布団が配置されている。その背景には、口述筆記の様子を撮った貴重な写真も飾られているので、見くらべてみるのも楽しいだろう。そのほか、書斎に焦点を当てた企画展ということで、三浦の元恋人から送られた遺書や光世の日記といった貴重な資料も展示されている。会期は8月27日(土)までなので、夏休みに訪れてみてはいかがだろうか。

しかし、書斎の展示を一時的な企画展に留めておくのはもったいような気がしなくもない。口述筆記といえば三浦綾子の代名詞だ。スペースの問題もあるだろうが、何らかの形で9月以降も書斎を見られるよう知恵を働かせてもらいたいものである。