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うまれそこねし愛へ

無花果回

生まれなかったもの、名を持たなかったもの、触れることのできなかった愛。
その不在に、そっとひとつの文字を与えるようにして、この詩を綴った。
虚数 𝒾 と古い仮名「ヰ」とがひそかに重なりあう場所で、喪失は祈りへ、祈りは存在の証へと変わってゆく。

タグ: #詩

452文字

數へえぬ ものを
名を もたぬ ものを
うまれぬ まま
息してゐる ものを

 

おのれ に おのれ を
かさねて ほろぶ もの──
、と
そつと よぶ

 

書かれざりし 假名の
あたたかい 空白の やうに

 

ふたつの極を
ひそかに いだきて
わたくしの 胸の裏がはに
ただ 立ちつくす ひと

 

合掌
じつ數の軸と
虚軸が
ただ 十字に あふ

 

その ひとてん
わたくしは
祈り と呼びたい

 

ナム
ヰマジナリィ
ナム

 

うまれそこねし みどりごよ
いきそこねし わたくしよ
えらびそこねし やさしさよ

 

ハナゾノは
數式すうしきの むかうがはに
桃いろを ひらき
零に ほどける

 

そこに、
ちひさな 花びらが
一片
觸れえぬ指を かさねる

 

複素野ふくそやの どこかの 點で
キミと わたくしは
ひつそり
息を かさねる

 

それは 起こらなかつたし
それは 永遠とわ
起こりつづける

 

ふと、
頬が
ぬれてゐる

 

ありがたう
𝒾 よ
わたくしの アイ よ

 

──ヰ とも
𝒾 とも
愛とも
よみ得る ひと よ──

 

ほろびる ことで
こんなにも たしかに
そこに ゐる ひと よ

© 2026 無花果回 ( 2026年5月10日公開

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