きみが
聲に紅を引いた朝
わたしは まだ ちひさく
「ばんざゐ」と
きみの口から
萬の歳が
こぼれおちて
誰かの掌に 砕けた
ホ・マ・レ
ホ・マ・レ
舌のうへで
塩のやうにとけて
やがて 海になつてゆく音
紅──
血──
セ・ン・ニ・ン・ハ・リ
白い布のうへ
針が とほる
ははの背後に ははがゐて
そのまた背後に ははがゐて
鏡のおくまで
ははだけが 並んでゐた
ははの 母音──
あ、と ひらく喉のおくに
うすく
化粧が
施されてゆく
「征きてかへれ」
「征きて還らず」と
きみは 言ひかへた
ねえ きみ
今もまた
誰かが
きみの聲に
紅を 塗らうとしてゐる
その手は
やさしくて
きみの てのひらに
そつくりだ
そして
わたしの てのひらにも
きみよ
落としてほしい
あかぎれた
ふるへる
ははの 母音で
もういちど
わたしの名を
呼んでほしい
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