黒塗りの罪悪

人間賛歌(第12話)

山雪翔太

263文字

黒塗りの罪悪に歪まされた少年は、もう人間には戻れない。

確かな感触を覚えてる。
あの風船が割れるような感触。
あの空間が歪むような感触。
あの空に睨まれるような感触。
その感触は今もべっとり
油みたいに張り付いてる。
罪悪に睨まれるあの空間は
もう思い出したくもない。
ごめんよ母さん、僕は人じゃなくなったんだ。
もう一度人になりたい。
でももう無理なんだよね。

突発的で、誘発的で、偶発的で、依存的なあの感触は
もう思い出したくない。
もうやりたくもない。

でも

やりたい

やりたい。

やりたくなった。
なぜか僕の罪悪が、
やりたいと叫びだしちゃった。

あの感触に再び会うために。
歩いているこの町を。
僕の故郷のこの町を。

2022年12月15日公開

作品集『人間賛歌』第12話 (全41話)

© 2022 山雪翔太

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