混詩「初志」 2018.10.19

混詩集 (第6話)

Juan.B

886文字

※信ずる者達へ捧ぐ
※その残りかすを親愛なる「ふつーの日本人」達に捧ぐ

「日本人なんかになるな!世界人になれよ!」
――“ポリティカル・エイリアン”より

なんと初志を保つことの難しいことか

なんと精神の枯れ萎えの激しいことか

なんと力に屈さぬことの厳しいことか

なんと我々は貧弱で弱く苦しいことか

 

原点は遥か遠く掻き消えそうな所にあり

だが言ってやれ

言葉だけでも残しておけ

違いを生み出すのは誰か思い出させよ

 

周りが高層ビルの一室の一机と虚ろな広告に心躍らせている時に

お前は頭を抱え醜い体を引きずりまわし逃げ回るばかりであった

周りが人の血を染めた様な旗と隷従の歌に盛んに従っていた時に

お前は卑屈に頭を20°ほど下げてモゴモゴ爪噛むばかりであった

 

まだ未成年と侮蔑を込めて呼ばれる内から

世界との対決をさせられ

将来の夢や進路希望などよりも

血の観念が形をもって周囲を曇らせ

 

嘲笑い

ナメられ

脅され

跪かされても

一人は何の危害もせず清く死に

一人はあくまで警官と戦った

そしてもう一人はようやく恐怖から目を逸らし初志を決めた

大きく生々しい霧の様な化け物との対決

 

血と人々とを筆で結び

握った筆のインクは血によって補充される

小気味の良い話や悪い話を書くためではない

痴話喧嘩や童貞と処女の憎悪を書くためでもない

オモチャをぶら下げ青や緑の制服を着た連中と戦うために

二人の同胞を潰し我々を分つあの澄ました顔の力学を問うために

 

初志のなんとか弱いことだろうか

だが初志のなんと根深いことだろうか

十五で天命を決めた中国人よりは遅いかも知れないが

十八の初志が劣っているなどと言えるものか

例え一時は見失っても

必ずここに戻ってくる

誰もが目を背けるものに

目を向け続ける初志のなんと辛いことだろうか

 

依然お前は

老若男女問わず周りから

笑われ

蹴とばされ

あるいは懐柔され易いと思われ

出自が分かった瞬間にはナメた口を利かれ

アイデンティティ!

グローヴァリズム!

軽々しいカタカナが飛び交い

 

それでもなんと

なんと初志の混沌の頼りあることか

初志が全てではなくここから広がっていくのだ

純粋な一筋の光ではなく禍々しい気を放つこの初志は

人々をより美しく強く永久にするためではなく

人々がもともと混ざっていたことを示すために

2018年10月20日公開

作品集『混詩集 』第6話 (全12話)

© 2018 Juan.B

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