かれこれ20年くらい前になるが、私が通っていた小学校の校長は少し変わり者だった。
脚力が自慢で、ある時体育の時間に50m走をしていると、どこからともなくフラフラを現れて
走っている生徒の横を全力で走りはじめた。
そして圧倒的な差をつけてゴールすると、またどこかに消えてしまう。
またある時は、プールの時間になると
すでに参加が決まっていたかのように水着で待機していて、
一緒になって泳いだ。
私は低学年の頃、水に顔をつけることができず泳げなかった。
すると校長がこちらに寄ってきて
私の手を掴むと、水に顔をつける練習をしてくれた。
それから不思議なことに、たいした時間もかからず水に潜れるようになり
何事もなかったかのように、私は泳げるようになった。
さらにある時、廊下を歩いていると、対向から校長が歩いてきているのがわかった。
他の生徒が何やら校長につかまっていて、少しの間をおいて解放される。
これが数回続いた後、私の目の前に立ちはだかった校長は、
その長い両腕を廊下の横幅いっぱいまで広げ、通せんぼのポーズをとった。
「ここを通りたければ、私にジャンケンで勝ちなさい」
といった意味合いの右手拳を突き出し、
本当に、勝つまで通してもらえなかった。
校長は数年で異動してしまったため、
子供心に「変なおじいさん」という強烈な記憶を残して
風のように去っていった。
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