〈2〉
ぼくが言われたとおりのものをつくったとき、上司は、言われただけのものじゃだめだと言った。
何を求められているか考えろと言った。
だから、少し求められていそうなものを付け足した。それはいらないと言われた。
社内でプレゼンをすることになった。上司に、未完成でいいので、デモをやれ、と言われたんだ。
起動画面ができていなかったので、ダミーですと説明をした。
社長は、できてないなら見ないので、できてから呼べと言って去った。
上司は、起動画面ぐらい作っておけよとぼくに怒った。
未完成でもいいけれど、完成しているようには見えるようにしろと言った。
どのぐらいかかるかと聞かれたので、三ヶ月は欲しいと言ったら、来週までに出せと言われた。
一週間では完成しなかった。毎晩泊まり込んでも、間に合わなかった。
金曜に上司が席まで来て、土曜の夕方に社長に見せるから、どうにか体裁を整えろと言った。
どうすればいいか聞いたら、紙の資料を渡せば少しは伝わるだろうと言った。
プログラムを中断して、パワポで紙の資料を作った。
普段やりなれていないので時間がかかってしまった。
それでもどうにか朝にはできた。プログラムも夕方までにはなんとかなるだろう。
顔を洗って朝飯を食べていると、上司が出社してきた。
ぼくが食事をしているのを見て、余裕だなと言った。
夕食も食べずに資料を作ったことは、言えなかった。
資料はできているかと聞かれたので、プリントを見せた。
なんでパワポで作るのかと怒られた。カラーで無駄だとも言われた。
A4ペラ1枚の資料でよかったのに、と呆れられた。
肝心のプログラムはと聞かれて、夕方までにはなんとかなると答えた。
まだ本体ができあがっていないことをなじられた。
徹夜したのに、何もいいことはなかった。眠い。
午前中いっぱいやって、あとは起動画面を作ればいいというところまできた。
とりあえずプログラムは目的を果たせるところまできたのだ。
さすがに眠いので、少しだけ仮眠を取ることにした。
声をかけられて目覚めると、30分ほど経っていた。
深く眠ったので頭が冴えてきたようだ。さて起動画面を作ろうか。
上司は、社長が早めに来たので、すぐに見せろと言った。
パワポの資料を社長に渡した。表紙を眺めて、中身をペラペラした。
ろくに読まずに、すぐに動かせというので、プログラムを起動させた。
先週と同じ未完成の起動画面が、ディスプレイに表示された。社長は立ち上がって、出て行った。
月曜日から会社を休んだ。火曜日も休んだ。
水曜日に上司から電話が来た。木曜日に社長から電話が来た。
金曜日に退職願いを書いて、ポストに入れた。
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