メニュー

手相

巫女、帰郷ス。(第29話)

吉田柚葉

実際、映画を見に行くのは結構ストレスです。

タグ: #リアリズム文学

小説

1,676文字

前日にネットで予約をしたのできょうは十五時から映画を見にいかなくてはならない。そうなるとはやく目覚めてもどうにもそわそわしてすべての時間が映画の待ち時間みたいになる。

とくべつ見たい映画ではない。というか映画館で見たいとおもう映画なんぞここ何年もない。月に二回くらいは映画館にいく習慣があるだけだ。習慣を義務に思っているだけだ。見たところでおおきな感動はえられない。まあこんなもんか、とおもうだけだ。

映画館はもより駅から二駅いったところのイオンモールのなかにある。まだ朝の十時なのでこんなにはやく家をでてもしかたないのだが、家に居てもすることがないのでとりあえずそとにでた。すこし風があった。

小説でも書こうかとおもってもより駅まえのスターバックスコーヒーにはいった。小説を書くというのはこれも義務感からだ。書きたいという感情はない。むしろ書きたくないという思いの方がおおきい。

店員からコーヒーをうけとって席につく。ノートパソコンをひらいてしばらく宙をながめる。やはりなにも書くことがない。

原稿用紙にして五枚とかの掌編を四〇篇ほどあつめて一冊にしたのが一年半まえ。原稿用紙にして二〇枚くらいの短篇を十篇あつめて一冊にしたのが十一ヶ月まえ。それらを執筆していたころもべつに書きたいものはなかったがそれ以降、さらに書くことがなくなかった。うまく書こうという意識が希薄になり、評価されたいという思いも皆無になった。

© 2023 吉田柚葉 ( 2023年9月30日公開

作品集『巫女、帰郷ス。』最終話 (全29話)

巫女、帰郷ス。

『巫女、帰郷ス。』は4話、12話を無料で読むことができます。
続きはAmazonでご利用ください。

Amazonへ行く

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

2.0点(1件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  1
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

著者

「手相」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"手相"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る