日常。(44)

日常。(第37話)

mina

小説

1,386文字

男友達と飲みに行ったときに恋愛の話しになった
「女の人ってやっぱり好きな男の人とするセックスはよりカンジたりするんですか?」
「うーん…」
「っていうか感情が入ったほうが濡れたりとかするんじゃないですか?」
「そうねぇ…」
「ソコは即答で好きな男とするセックスの方がカンジるわって言って欲しいですよねー、僕としては」
「そうなの?やっぱり?」
「もういいですよ、もう聞きません」
男友達の呆れた顔を見ながら、私は真剣に考
えていた
「 … 」
最近は恋愛らしい恋愛をしてなかったし、そ
んなことを考えたこともなかったから…
「男友達ってやっぱりいいわ」
「何ですか?急に」
「だって私…セックスに感情が入るなんて思ったことなかったもの」
「マジですか?それって職業が関係してるんですかねー」
「職業かぁ…」
「あ、傷つきました?」
「 … 」
なんで私が傷つくのかしら?って思いながら、
何となく笑ってみた
この仕事をしているとそういう感覚が無くな
っちゃうって同じお店の女の子も言ってたし
な…恋愛って重要なのかも知れない
男の人を好きになるのって大事なことなのか
もって思ってみたけど、きっとまた男の人に
触られるのが嫌になっちゃって、触られてる
自分が嫌いになっちゃって…
私なんてそれのくり返しだから、セックスでカンジることなんて…きっと無い
男の人なんて、きっと好きにならない

         ・          

今日妻が出て行った、若い男と一緒に
「 … 」
あなたとのセックスじゃカンジないのよって、はき捨てるように言われた
僕は妻を好きになって、一生懸命尽くしてきたつもりだった
けど妻はその僕の全てを否定して、否定して拒絶した
そして僕にはまだローンが何十年もある家が残り、これからただいまという必要のない生活が始まるという…何て…
「 … 」
自然と涙がこぼれてきた、そして大声で泣いた
「僕の何がいけなかったんだ!僕は君が欲し
がるモノを何でも与えてきたじゃないか!
君が…君が好きだから…!」
あなたとのセックスじゃカンジないのよという言葉が僕の頭の中をグルグル回って、僕を追い回す
「やめろ!」
頭がおかしくなりそうだった
そんなとき携帯電話が鳴った
「 … 」
以前行ったことのある風俗店からメルマガが届いた
「なんだこのタイミング」
風俗遊びして忘れろって、誰かに言われてるみたいで可笑しかった
「 … 」
僕はそんな誰かの提案にのってみようと思った

         ・          

「初めまして」
「あ、初めまして」
私は男友達とのそんな会話なんてすっかり忘れて仕事をしていた
今日は指名してくれるお客様が続いていて、とても忙しかった
やっと最後のお客様だ!これで帰れるって思ったら、初めましての挨拶をするときにすごくテンションが上がってしまった
更に外見がちょっとタイプだったから、私のテンションは上がりっぱなしでホテルに入った
「はい、お茶どうぞ」
「あ、ありがとう」
私より年上でどこか寂しげで、喋り方が優しかったから、私の方から積極的に責めてしまった
「 … 」
最初は私に責められっぱなしだった、その人が急に私の両腕を掴んで激しくキスをしてきた
「あっ…」
そのキスは攻撃的なんだけど優しくて…私のカラダが感情に支配されていくような今までカンジたことのない感覚が次から次へと私を襲ってきて…一気に私を濡らしていった
「 … 」
私はあの時の男友達との会話を思い出していた
そして今から好きになってしまうかも知れない目の前にいるこの男の人との時間を愉しんだ

                end

2015年4月13日公開

作品集『日常。』第37話 (全70話)

© 2015 mina

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