綾瀬新撰組「水戸橋の化け物退治②」

歴史奇譚(第14話)

消雲堂

小説

939文字

2.

翌日の朝のこと、次郎吉はいつものように銭座に出かけた。昨夜、口の大きな武士たちと出会った伊藤谷橋に差し掛かると、橋の上に2人の男が立っていた。昨夜、口の大きな男と一緒にいた男たちのようだ。一晩中、橋の上に立っていたのだろうか。男の1人が次郎吉を見つけるとニヤリと笑いながら声をかけてきた。

「小僧、昨夜は悪かったな」
「小僧じゃありません、私は16です」
「おお、こりゃあすまん、これから銭座に行くのかい?」
「はい、仕事ですから」
「ご苦労だな、気をつけて行くんだぞ」
「ありがとうございます、では…」
「お、小僧、いや、お前、名はなんと言うんだ?」
「五兵衛新田の次郎吉と申します」
「ほう、俺たちは金子さんの屋敷に世話になっている新撰組の相馬と野村だ。近くに住んでるんだな…よろしくな」
(ぷっ、世話にだって? 京都から尻尾を巻いて逃げてきて、ついには江戸にもいられなくなってここまで逃げてきて、金子様に匿ってもらってるようなもんじゃねえか。それにしても、昨日のおっかねぇ印象とは随分違うなぁ)
次郎吉には彼らが人の良い男たちに見えた。
「相馬様と野村様ですね、承知いたしました、それでは失礼いたします」そう言うと次郎吉は彼らを前を通り抜けて銭座に向かって歩いた。

「あの小僧、かわいいやつだなぁ」相馬が去って行く次郎吉を目で追いながら呟く。
「相馬様、その気があったんですか?」と野村が笑った。
「くだらねぇことを言いやがる、俺にもあのくれぇの弟がいたのさ」
「さようでございますか? 安堵いたしました」
「ふふ、馬鹿野郎め。ところで、そろそろ交代の時間だ。おお、来た来た、さ、屋敷に戻ろう」
その時、五兵衛新田の方から3人の男たちがゆっくりと歩いてくる。

相馬というのは相馬主計であり、常陸・笠間藩士の家に生まれ、幕府の歩兵募集に応じて第二次長州征伐に参加、征伐軍解散後に新撰組に入隊した。鳥羽伏見の戦いを経て江戸に戻り、甲陽鎮撫隊では局長付組頭となった。

野村というのは野村利三郎のことで、美濃の出身。今に残る新撰組名簿では、この五兵衛新田駐屯時のものから彼の名前が出てくる。甲府鎮撫に失敗し、隊士が少なくなったために江戸で隊士募集の際に入隊したと思われる。

2014年4月20日公開

作品集『歴史奇譚』最新話 (全14話)

© 2014 消雲堂

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