佐々木晴男は今、朝の六畳間で六年前の[おこづかい帳]を感慨深げに眺めている。八冊の大学ノートは同じ大きな茶封筒に入れられているため、いつでも取り出す事ができるのだった。
佐々木晴男にとって、その少し表紙が擦れて剥げているノートに書かれている文字と数字は、まだ未成熟なものとして映っている。平仮名や漢字にはどこかしまりがなく、走りすぎているように思えた。特に数字のゼロに注目すれば、明らかに隙が多い。一万円の最後のゼロが、わずかだが下にずれているし、楕円の空洞部の面積が微妙にそれぞれ異なる。しかし何より佐々木晴男の興味をそそったのは、過去の自分の微笑ましさだった。
摘要・・・・拾った!
収入・・・・1
残高・・・・1,662
摘要・・・・ギザ十発見!
支出・・・・10
残高・・・・1,652
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