絶滅者 31

hongoumasato

小説

1,504文字

遂に「ワタシ」とヤクザの全面戦争が幕を開けた。

人数で圧倒的に不利な状況下、「ワタシ」は奇策を用いる。

一方、中年ヤクザ・若松も動き出す。

そして「ワタシ」が乗り組んだ組組織本部の最上部には、最強のアサシン達が控えていて・・・

一階の組員詰め所に、金髪モヒカンがいた。

 

一丁前にボディガード面している。

 

ステルスで姿を消したまま、一刀両断した。

 

金髪モヒカンの体が二つに裂けている間に、ブレーカーまで瞬間移動する。

 

組本部の電気系統を全て束ねる配電盤。

 

それに拳をめり込ませる。

 

瞬時に訪れる暗闇。

 

組本部に落ちる不自然な静寂。

 

二階への階段脇の部屋には「弾よけ兼鉄砲玉」のヤクザが二十人詰めている。

 

突然、二つに割れた金髪モヒカンの体。

 

そして暗闇。

 

戦闘訓練を積んでいないチンピラ連中は、我を見失って右往左往している。

 

いくら日本有数の暴力団組織の精鋭とはいえ、堅気への恐喝や、敵対組織への鉄砲玉しか実戦経験の無い連中だ。

 

破壊は容易。

 

闇に包まれた詰め所に戻る。

 

ステルスで姿を消したまま、五人程軽く斬る。

 

決して絶命・気絶しない程度に。

 

彼等が悲鳴を上げ、銃を乱射させるために。

 

効果は適面。

 

天慈会の時同様、壮絶な同士討ちが始まった。

 

暗闇に煌く無数のマズル・フラッシュ。

 

その鮮烈な数だけ散っていく命。

 

この烈しい光に奪われるなら、命など惜しくないだろう。

 

ズル賢く物陰に隠れた者だけを破壊。

 

銃声が止んだ。

 

虫の息の者が数人いた。

 

その害虫を駆除して、二階へ移動した。

 

 

停電の瞬間、若松は叫んだ。

 

「親父、上にあがるぞ!」

 

停電したということは、配電盤がやられたということ。

 

ということは、ワタシは一階にいる。

 

そう瞬時に判断した若松。

 

お見事。

 

視界が利かない暗闇の中、それでも若松は賢之助を的確に三階へと誘導する。

 

あらかじめ組本部の構造、逃走路を頭に叩き込んだからこそできる芸当。

 

抜かりなし。

 

三階には、十人の護衛が詰めていた。

 

彼達は、正確に言えばヤクザではない。

 

神政組と杯を交わしてはいるが、彼等は元々フリーのアサシン(殺し屋)だった。

 

元アサシンの彼等は、組のシノギは一切やらない。

 

連絡さえ取れれば、どこで何をしていようが自由。

 

そして組が極秘裏に暗殺・破壊工作を行う場合に限り、召集される。

 

この国の闇社会で名の通った彼達を、大金かけて囲っている理由は二つ。

 

まず、敵対する組に使われるのを防ぐため。

 

要は、敵に回したくない精鋭の囲い込み。

 

そして鉄砲玉程度では如何ともしがたい強敵・局面を一撃必殺で打開するため。

 

ワタシは暗闇の中、三階へと通じる階段を見上げていた。

 

異形のモノとの融合で得た能力。

 

それは遥かに人智を凌ぐ。

 

だが、物事に完璧は無い。

 

警官のリボルバーで被弾した如きで苦戦を強いられた時。

 

樹光の予想外の能力で窮地に陥った時。

 

嫌という程、それを実感した。

 

目前の階段の上にいる連中。

 

「彼達をナメてはいけない」

 

内からの警鐘。

 

この階段の向こうにいる連中もワタシと同じ。

 

人間を破壊することが、日常となっている連中。

 

それは最早、人間ではない。

 

彼達もワタシと同じ、人外の生き物。

2019年2月21日公開

© 2019 hongoumasato

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