久しぶりに町に出てみると表通りが通行止めになっていた。不発弾処理を行う旨の看板が立っている。バイクを路肩に乗りつけて看板を読んでいた背広姿の男が「またかよ」と独り言のようにつぶやいて走り去った。俺は別に急ぎの用事があるわけでもないからのんびり裏道を歩いて迂回すれば済む話だ。
みやげ物屋のけばけばしい看板ばかりが目立つ表通りには趣のかけらもない。最近では地元の人間が経営する店は少なくなり、ヤマトゥンチュの観光客が落とした金が内地企業の懐に返っていくという不毛な無限経済循環がだらだらと繰り返されている。猛牛の群れのように大挙する中国人爆買い観光ツアーのグループが目もくれない裏道の小さなそば屋は、いつの間にか店を畳んで貸店舗になっていた。みんな吹き飛ばされてしまえばいい、という声が俺の脳髄の奥で響いた。
道の先から若い女がせわしなくガイドブックで顔を扇ぎながら歩いてきた。容赦ない午後の日射しに目が眩んだのか、手探りをしながらふらふらとおぼつかない足取りだ。表通りを閉め出されて途方に暮れた観光客といった様子である。すれ違う瞬間、甘い香水にほのかに混ざった女の汗の匂いが鼻をくすぐった。
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