小樽市立小樽文学館では、2017年8月18日より企画展「凍った心をとかした手紙 奇跡の461通 ―獄中の死刑囚永山則夫とある女性との、魂の交流―」を開催中だ。本展は北海道生まれの作家・永山則夫の死刑執行20年を記念した企画で、獄中結婚を果たした妻との書簡が本邦初公開されている。会期は9月10日まで。

永山則夫は、1968年から1969年にかけて4人をピストルで射殺し、1997年8月に死刑を執行された元死刑囚だ。犯行当時の年齢が19歳だったため、のちの少年犯罪や重大犯罪における量刑の基準となったことでも有名だろう。また、死刑執行がいわゆる酒鬼薔薇事件の直後だったということで、見せしめ的な意味合いが強いのではないかという論評も多くなされた。日本の犯罪史および司法史においては必ず名前の登場する重要人物といえる。

一方で、永山は小説家として高い評価を受けていたことでも知られる。獄中で執筆活動にいそしむ死刑囚はめずらしくないが、単なる手記の発表にとどまらず、文学賞を受賞し文壇から一定の評価を受けるまでになった獄中作家は日本では永山ぐらいではないだろうか。しかも永山はろくに教育を受けておらず、収監前は読み書きさえまともにできない状態だった。獄中での独学によって作家としての地位を確立した点は特筆に値するだろう。

現在開催中の企画展では、そんな永山が獄中結婚した女性と交わした手紙の一部が公開されている。夫婦間での文通は全部で461通にもおよんだが、今回展示されているのは1980年4月から1981年8月までに交わされた17通だ。さらに、永山の文筆家としての処女作である手記『無知の涙』の直筆ノートも展示されている。永山文学の原点に触れることのできる展示といえるのではないだろうか。

連続殺人犯という経歴ゆえに毀誉褒貶の激しい作家ではあるが、永山の文章に一度でも心を打たれたことのある人であれば、訪れる価値はあるはずだ。道央・道南に立ち寄る予定のある人は、ついでに足を伸ばしてみてはいかがだろう。