誰もがあっと驚く、手品と奇術。テレビでも度々奇術の特集が組まれたり、100円ショップでも簡単な手品キットが売られたりするなど、人々を楽しませる余興としてとても身近である。しかし、燕尾服を着た紳士が手品師や奇術師のステレオタイプである様に、手品や奇術が日本に密接なものと感じる人は多くないかも知れない。

しかしこの度日本奇術協会から、日本にも存在した、手品や奇術の歴史を明かす書籍「日本奇術文化史」が刊行される事となった。内容は3部構成で、日本奇術の「歴史」に相当する部分を福井県立図書館主任司書の長野栄俊さんが執筆し、「演目図説」を元愛知江南短期大学教授の河合勝さんが執筆した。また「資料編」として奇術書目録、用語、約500人の人名録を2人でまとめるなど、図鑑的な使い方も出来る様に工夫されている。日本古来の手品は「和妻わづま」と呼ばれ、1997年に文化庁により「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」として選択されており、その技術の継承に不安があった。「日本奇術文化史」の刊行をきっかけに、これからも日本の手品・奇術とその研究の発展を願いたい。

「日本奇術文化史」は非売品で、限定三百部。各県の県立図書館などに寄贈される模様。