北米の図書館では、2016年に入ってから、楽器やネクタイなど意外なものを貸し出すサービスを続々と開始している。「図書館といえば書籍を借りる場所だ」という従来のイメージは、出版不況の現代にあって徐々に崩れつつあるようだ。
楽器の貸し出しを開始したのは、カナダのバンクーバー公共図書館だ。2016年6月6日に地元メディアが報じたところによると、図書館カードを所持していれば1つの楽器を3週間借りることができるという。実はこれに先駆けて、4月にもトロントの図書館で同様の試みが開始されており、今後カナダでは「図書館で楽器を借りる」という行為が普通のことになっていくのかもしれない。
ネクタイの貸し出しを開始したのは、アメリカのジャージーシティー公共図書館だ。こちらでは178本ものネクタイを用意しているといい、図書館カードで最大3日間借りることができるそうだ。これも、ニューヨークのクイーンズ図書館での先例があり、やはりアメリカでは図書館とネクタイが密接な関係になっていく可能性がある。
興味深いのは、いずれの貸し出しも書籍資料に準ずる手続きで行われる点だ。つまり新規サービスというよりは、サービスを拡大したという表現の方が正しいのだろう。今でこそ当たり前のことだが、筆者が子供の頃にはMr.Childrenや安室奈美恵といったリアルタイムで大ヒット中のCDが公立図書館に置かれていることだけでも驚かされたものだ。現在では映画やアニメのDVDも充実している。その延長と考えれば、多少理解はしやすくなる。
この波が日本の図書館にまで到達するかどうかはまだわからないが、出版や流通の形が変わりつつある今だからこそ、図書館の姿が変わっていくのも自然なことだとはいえる。数年後には、予想もつかないようなサービスが図書館のスタンダードになっている可能性もあるだろう。
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