はじめに言っておく。
本作は平成の習俗を追った構成となっており、くどいぐらいに当時の流行り物や社会情勢、風俗が描写される。アーティストやスポーツ選手も実名でバンバン登場する。しかしなぜか政治家だけがKとかAとかイニシャル表記になっている。首相レベルの者を伏せてなんの意味があるんだ? なんに対する配慮なんだ?
それはさておき、作中の事件を追いかけてみよう。
まずは、「キムタク」の殺害。これはブルーが行ったことははっきり書かれており事後の死体遺棄も含めて謎はない。
次に青梅一家殺害事件で、こちらは直接的な描写はない。一方で、ブルーが「殺人犯」であることは記述がある。これはキムタク殺害のみを言っている可能性もなくはないが、青梅一家殺害犯である可能性の方が高いだろう。
最後の二名殺害もブルーが呼び出して殺害したと疑われているところで課題箇所が終わっている。
最後の事件から検討していこう。ブルー以外の犯人が想定しにくい一方で、このころはそれなりに落ち着いていたはずの彼がなぜそのような凶行に走ったのかという謎がある。
ここで被害者に注目しよう。物語において犯人にならんで話を展開させるキーだからだ。かれら2人についてはキャラとしては弱い。となると、鍵は生き残った子2人にあるのだろう。
そういって思い出されるのは、児童虐待の点である。4人と接点のあるブルーは虐待の場面に直面し、親2人を排除する方法に出てしまったのだ。障害は殺して排除するしかないと学習してしまったブルーの習癖なのである。
さかのぼって、青梅の事件を検討してみよう。シーンとしては母が祖母に対してブルーをけしかける場面で終わっている。
キムタク殺しで一線を越えていたブルーが祖母に襲いかかることに抵抗はないだろう。縛り上げた後で、刺したのは母である。これは服の返り血からも推測できる。おそらくブルーはとどめの絞殺に関与している。陰湿な加害を行う母に嫌気がさして、それを終わらせるためなのかもしれない。
いとこの5歳児殺しはまた違う考察が必要と思われる。こちらは母の単独犯行であろう。あるいは母になにがなんでも殺すように強いられたか。どちらにしろブルーは強いショックを受ける。茫然自失となったブルーをほっとき、母は返り血で汚れた服を脱ぎ風呂に入る。それでショック死は警察の捜査における推測どおり。
茫然自失の状態から回復したブルーは死体だらけの家から逃げ出す。
ここまで推理してみたが、確認みたいなもので、あまり推理という感じではないなあ。
もう少し派手なトリックが仕込まれていないか考えてみたが、思いつきはしてもしっくりこない。
最後に言えるのは、平成の始まりに生まれたというブルーは平成の終わりである本作のラストで死ぬだろう。精神的に追い詰められて限界になっている奥貫あたりがやらかすのだろう。そしてブルーは逮捕に至らずに死ぬのだ。そう匂わせているし、救われるには人を殺しすぎている。作者による処理としても収まりがよい。そうにちがいない。
と思って、読み直したら、最初に平成の終わりに死んだって書いてあったな。。。
あと言えるのは、生き残った2人の子でなにかあるのかもしれない。特に下の子はネームドキャラの割にこれといった役割がない。For Blueの謎の語り手は彼なのかもしれない。
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