吐呑

arai

1,376文字

よるにむかって歩いている

たとえは、リゾートには遠い向日葵の退廃美

たとえは、青白い満月を抱くラブホテルの演出効果

 

よくよくれば、いつかの、大きな声で叫んでいる

だまし絵のよう春の嵐のウロウロするおひさまだよ

 

「綺麗なものだとおもうけど?」

(いつかの位置にかえってくる)

 

この先は長く細くモノクロにのびる辺りで。よるにむかって歩いている

 

オニユリ/アザミ/ノブドウ。

そのようにスポイトで塗りつぶすのは、なぜだろうか。小道に目につくように歪だった。けれどどうだろう。いつかの秋にある枯れたそれは、また舌で転がすだけ。

 

この体を あやしている 異国のカレンダーは今更壁にぶつかり、暑苦しく刺し殺すような人混みによって足を取られ、蝶と波のように広がる。

現実世界から遊離していく。背を押される、自慢の垂れた耳、使い古しの春画。逆さまの湖に刷り込まれた、腹に胸になにか重たいような。無街灯ばかり苦しいような。

 

すこしも止みそうにない/

水面が/

洩れていく。/

 

まだざんざめく。

 

――あくびだよ、また

 

これからの星屑も手つかずの宝石箱。

〈泥水とポーション/ざぶんざぶんとくちゃくちゃ〉

、の者が。

 

深酒に、

 

溺れていたよな印象派の絵画、

識らない夢を知っていたふりして

突き動かされるばかりなのだが、

蜃気楼の安堵をどこか祈っている

 

電線に止まる獣の視線で四畳半、縋るのかこんなところへ、苦し紛れでも。スクリーンにはそそけた顔の 『プラトニックな乙女』 はんぶんすぎたところで、足踏みしている。

痺れた秒針だけ伸ばせるスペースに、息もあたらないほどの場に、少し寄りかかるしかない未来予想図、羅針盤、あり。

 

いま。いきをつき、じかんをとじる

 

すがたあるころは。

「大雨のひかりに叢がるにはまだ早いの。」

四角錐をなんぼか、ひとりごとを。いいながら、

優雅な蛾は幾星霜の傘もささずに 何処へ行こうか。

 

重ねただけの ガタボコな、段で背伸びして、

(ひねくれた散歩道に ただの夕暮れだとは 思わないものです。)

摩天楼がギラつかせる部屋の中を……

 

これは真っ直ぐであり。あやふやな気持ちのまま、喉元を裂き、絶命するときまで自撮りする。躊躇なく一部を取って、愛でることが。

(薄情も信じちゃいない癖に。)

くす玉がそのうち割れるまでは撓んでいて 垂直に突き通った色は 当たりくじを買い尽くす光が あたり、薄まるけど。天から吊られた首を引く、後に痕に落ちた桜の枝を手にとってみる、

 

(けれど。器に、咲かせたものだったか。)

 

ほら、夜空を奪いにいく息も、絶え絶え、かどに立ち。道行が暗く陰っていく。やわこい土、手触りは悪くない。そんな遠いところでもないのに、なくし物が外せてから、真夏をまま、ねすごしても月面、とがらせて。

エアコンと扇風機に撹拌されて、この褪色時計はまったく平気な時報を均した。

 

渋めの麦茶の氷も溶けた今を向いて、二つ返事の身の上、

押しては引くいまだ暇もなく転がりゆく。

また、みんなの街はにぎやかに、あるひと。よるにむかって進んでいる。

キバナコスモスの見頃すぎて。何も無いようで意味があるから。つっかえているから。

みえてしまうのだとおもいたかった。

2023年9月18日公開

© 2023 arai

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