常磐未来

arai

1,640文字

と或る日常から蘇る、又は重なってしまう/永遠や普遍たるなにか、人の心の中で求めたり刻まれている/手紙に認めるような、行為に/口伝なり詩文なり、‪戲言なり、会話の隅々だったりに、現される。

Dear Mr. and Mrs. ___
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It has been a long time since we have met.

 

――夜叉のような花火
洗い流した 憐れみだろ
/見下ろしてゆくのは 支配される立場があるから
/空虚を味わうように 約束を背負っている
(立体感を生み出すための 歪み)
忘れっぽい有頂天を追いかけ回して、
/見栄を買う
/劇薬を扱うように?
弾んだ気分の問題 折に触れて
膨張した沈黙 指と指でぬぐわせる

 

「びりびりさせやがる」

 

 

母はでこぼこみちを踏み固めながら 本線へと帰ってきたのだ。ハイウェイから抜け道を慕って、残響が喧騒を持ち込み 宵闇が迫る 声を揃えた前奏曲が響き渡っていく。敷石の決まった数 かっこ悪いものだと強調し 轍に沿ってヒトが流れていくのを あぜ道を切り取り床に並べ 天を射して青あざが見られたもの、

 

晩夏、か――

逃げ腰に伝染る 生まれ育った街
 計り知れなく 壊滅した街

 

哀愁を含んだ瞳は 黙っていたが鋏をふりあげる、置き換えられた生魚を狙うように。それら 目をやれば淡水に潜む煉獄は気色悪く ひどいあしらいを描いても。納得もする/わら半紙よ/案山子のような仕事ならば。おかしな事だろうが 『岩渕朱里』はそこにいた。

 

日がな死を恐れない無人の広野を行く
 やるべきことを何もせず
 手放しでは喜べない形が ただ考えずに

 

 

この森林に水と魚が浮いている。

たくさんの煌きを生み出しながら華麗にもこの手から逃げ出していた、
 父はしばらくして。燃え殻を撫で付けながら、
 つちくれに、溜まり込んでいたものを拾い集めては踏み潰す、また燻ぶったぶんだけいっぱいに湛えた。この腐るほどの穢れが依然として船酔いのようにいつまでも。病的な大地と揺らめかせ歪ませて魅せているのだから、仕方がない。
 そんな日が塵積りあるということ。
 不快な透明感に投影された自らの寂寥感を泥沼の藍色、波間に流したばかりである。
 笛の音めいたフェリーが遠くに着岸し、闇の底へいくつかの灯りが放たれる。
 円ゐに墨を亘したような月のない夜こそ星星が耀き、ほそぼそとしたいのちの、夢や希望を募らせ膨らみ過ぎた野心が風にのり、にわかに、わらいごえに沈着する、たとえ凍える魂に少しばかり残された、夜光虫がまた啜り泣き、そのような波音がざわめきが銃声が手拍子でかき消される。

 

『久世 要』は不機嫌である。
 びんと跳ね起きたあとで眼下に開けた美景が気まぐれにも日暮れであったとして、大したことではなかったけれど。重いしがらみを纏わせるような漆黒があたりを覆っていくのだが、それもまた引け際の哀歌のように思え。
 ですから闇雲に祓おう、そして悲劇的な結末としてのマテリアルのひとつとして、丁寧に塗り込まれる記憶の秘訣をこうして、彼の歎息と漏らしているのだ。

 

 

Congratulations on the birth of your baby!

 

 

 まるで無遠慮な欠伸をかますヒト、《わたし》がいた。
 ああ、目映いほど陽気な音色が触フってくる、心などとうに壊れているのに、器などとうに廃れているのに、多国籍雑感が入り乱れた、その小さなハコ(Radio)から汚れた横文字が流行歌と疾走らせる。
――いつぞやの記憶を垣間見せ、翻される濁声に酔いつぶれてしまい――
 楽譜はなく記憶も薄れ、何もかも亡くしたはず。だのに受け継がれているのか、どこかだれかの胸のうちに、今もこうして熱を生み出すのだろう。

 

ああ逃れられやしない、愛おしくも狂おしい、魂のものがたりから

 

It was a pleasure to meet you! I look forward to seeing you again soon.

 

 

画一(的)/ みゅーじかるないと
常磐 未来

2023年5月21日公開

© 2023 arai

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