綴じ目の彼方

arai

895文字

鏡面の湖に私だけが浮いている絵葉書

真っ白で眩しく擦れていく風に中られ、逆さまに歩く人々の影が、ウロめく、どの黎明も昨日の煤のようで、おそろしくとおいな。玩具ブロックのくせに、悪態ついて電球に潜め、地を掻いて痛々しく滲み刻む、

 

私と日記と向日葵の腐る肉。

 

書き置くことは返事を返さなくては行けないのだろうがな。

こうして鏡面の湖に私だけが浮いている絵葉書を作ります。

 

とろい木漏れ日に青銀杏が抜けていく、微睡みのいま、それを行っているのかもしれない 私は タイムスリップを失敗した、寝癖だらけの彼方だったら 胸も傷まないことでしょう。

まだ悠く黄色い花がく、指先を老いて、ねえ ここに生きました。できればなにひとつ浮かべずに、重なり合うだけの歴詩処に、未来を映すRingsを添えるだけでも。

視界に映るときに さっきまで生きていた蝉のヌケガラが、直ぐ逃げていくだけ。

これが何かと適切に繰り返し違えることなく、画布に描くべき黒猫を見かけない、モンタージュが身悶える。

小さな命を刈り取る、ひとでいう一歩が、深海から届くだけの光を求めて、残響から向け出せずにいた。かたく爪を噛み光を求めて祈りを編む、ほとぼりを塗る。古時計の話をしようか。

 

食べかけのチョコレートに飲みかけのチューハイはぬるく、未来のおもいでを刈り取った花束でキミを迎えたい。

ネグリジェを抱いた雲、回転木馬に吹き荒れる雪月花と剥がれよ。

一羽の烏が溶けたうつわの浅はかなこと。線香花火を殺しタバコの肺を蛍に孵す、染み出したコンビニ袋から逃げ出した、明日の夏よ。

雨水に描く 山肌と尾根の草陰にうわのそらと近づき 砕氷が唄う。

永くレールは錆敷く悠く遡りおもい浮かべ、みちゆきの対岸を渡るすべを持たない 降り口もない列車を、心のなかで芽生える何かに対し、繋がなくてはいけないのだろう。

 

いわおの墓碑にちかい、

あわく、深い海の底から眺める夕景、

例えれば野花のことを。

あゝ灰色の町に。

 

リトグラフを史後毎併せた賤屋しずがや、静かなる遮断器だけ、待ちくたびれただけの天の川をまえに、紐解き、野焼きにくすべた魂を青白く、移りゆく朧雪にぶちまいた、心だけ。

2023年8月14日公開

© 2023 arai

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