いくつものすいめんをしいたうた

arai

1,466文字

しおからい うみから ぎょうこうを みています
(この胸に腹にそっとおさめる)
―― 海宙光芒

すこしの体裁が余剰に挟まるとき

 そこが揺蕩うだけだから、わからないけど

二枚貝はうまれたばかりの天使だから

刺青の核と 充足の翳だから

 

「たのしかったな。」呟いてみえただけのうたかた

 

雑踏の片隅でひび割れた眼鏡でもって、℃の合わない空気を必死に吸っては吐きながら。自嘲している貴方は、「可愛らしいね。」苦しくもないのなら、雲の陰に隠れ 明し暮す 灯りに現れる ささくれ立つそのあたりに落ちた花の色の 足踏みが途上して、ふとわたし、行き交う回遊魚を観察する

 

今に 今に向き合って、なんてなんも価値がない

そこは生ぬるくてあたたかくてやわらかい、

 

底は 浅瀬だろうから泳がなくてもいいから 身も心も錆びついたあとで、ふやけたゆびさきで今を愛撫している(おまえさまか)すきっ歯の喘鳴から鋭利な硝子が丸く たくさんの色を放って白い魂が溢れる、水中に浮遊する者たちだから きずだらけ

 

そんな白昼夢は「可哀想に、」私を のぞいていく 糞尿の悪臭と同じ色の鼻歌だと、眠っている。柔らかなシーツは 皴に馳せながら、ベッドの上で 見繕って。そんな夢ほど滑稽な ものかたりにある。行き止まりの道幅は軋み 不浄に伝う

 

いまの この時代だけがうつりこむ、いまの ところ。形を宿した かいなも 見当たらない/あんたの名を ぬいぐるみと しずめて、〈たそがれの彼〉と歩かせている/とかなんかと つついたりかくしたりしながら、ほほ、と。

 

 

どんな花が咲くのだろうね

 

〈どの口でも捧げている メシアそのもの〉

 

しおからい うみから ぎょうこうを みています

 

(この胸に腹にそっとおさめる。)――海宙光芒

 

それだけで しあわせで ありました。

 

 

溶け出すことも出来ない違和感は 不具合では、それではせいぜい海の底で もがいているだけで、それだけでしかないけれど、太い幹が立ち並ぶ、眼前の、中心に彼方があり わたしのもとでだけ、つばさをおとしている

 

ボトルメール。歯がゆくて 陶器欠片の ゆめうつつ で、そこに躰をよこたえた/ブリキの積み木に 歯車を与えて。手汗も殺した無意識に補強された歩行の粗が

 

「いっそ燃やし尽くしてしまいたい」「そんな勇気もないけれど」「傷だらけになるたけのしおれた背中から」「目的に達しないように」「海に流そうか河に浮かべよか」「いつぞやの稜線を凪いだ」

 

はなうたをも結びだして

(そんな言葉も尽くせやしないよ)

焙れているのか――なあ、きみよ

 

〈私〉がどこにいるのか、折り契る枯れ木を、想像から逃げ切れない、炎のなかに さんさんと触っていった光が。塵積る芥ばかりが、ゆうぐれどきの その背には。未だ痴らずとも わからないままで、白辺に熨せる(礎に腰を下ろす。)暗がりの平屋仕立て、ありきたりの死相が浮かぶよな 産み落とされた我が身を、(ここに遺している)残りわずかの輝石を躰に塗り込んで、

 

つまらない人生感に蓋をした。時折自虐的失笑が熱をもつ

 

床ずれのような目眩も 大差なく 蝕むばかりに

 

過去や未来を束ねて作られる理想論は

 

〈幾つもの水面を強いた詩。〉

 

かじりついているのは なんて ことなし/かわいている 柘榴そのものの血汐が ほとばしる/伸びた爪を削るだけのマスターベーション/ただ顔を逸らして みて 手を添えてあげるだけ

 

ただ、浮かない風船に 種は飾られているのか?

そうだったのかも しれないけど――――

2023年8月3日公開

© 2023 arai

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