すこし、降りはじめた。
雨やどりにはいる店をさがしたが、二十時をすぎて、どこもしまっていた。
雨あしがつよくなってきた。あきらめて、タクシーをひろった。
運転手の男は、饒舌だった。たあいのないはなしがいつまでもつづいた。それから、ちょっと声をひくくして、幽霊をのせたことがあるんですよ、と言った。自殺した俳優を、死亡報道のあった翌日にのせたというのだ。
「まあ、人ちがいだとおもいますけど」
「人ちがいでしょうね」
「だけど、わたしもね、テレビに出られている方をたくさんのせてきたので、人まえに出られている方と一般人のちがいがなんとなくわかるんですよ。あれはね、うーん」
"一九九四年"へのコメント 0件