一九九四年

かきすて(第30話)

吉田柚葉

小説

1,672文字

四連休も三日目です。なかなかおもう事あります

すこし、降りはじめた。

雨やどりにはいる店をさがしたが、二十時をすぎて、どこもしまっていた。

雨あしがつよくなってきた。あきらめて、タクシーをひろった。

運転手の男は、饒舌だった。たあいのないはなしがいつまでもつづいた。それから、ちょっと声をひくくして、幽霊をのせたことがあるんですよ、と言った。自殺した俳優を、死亡報道のあった翌日にのせたというのだ。
「まあ、人ちがいだとおもいますけど」
「人ちがいでしょうね」
「だけど、わたしもね、テレビに出られている方をたくさんのせてきたので、人まえに出られている方と一般人のちがいがなんとなくわかるんですよ。あれはね、うーん」

2021年7月24日公開

作品集『かきすて』第30話 (全40話)

かきすて

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© 2021 吉田柚葉

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