丁寧に升目の交差した点に並べられているのに気づく。と同時に数をみていくと、十ずつの列になっている。何列あるだろうか。死んだ旦さんが孵ってきたんのお。テレビで目の見えぬ老婆が言う。健康食品の通販かと思ったらドキュメンタリー映画だった。耳だけで僕はそれを確認する。鼻を衝く潮臭さ。僕は顔をあげなかった。匂いの先、青白いふやけた足だけが視界に入る。片方だけ草鞋を履いている。最後の升目の交差に、草鞋の持ち主が片膝を着き、最期の貝を置く。目を見張る置き方。素晴らしい貝。隙のない所作。優勝だあ。スピーカーを通した遠くから響く声は次第に大きくなり、僕が一瞬息を吐くと、いまやそこは八方からカメラのストロボの焚かれる競技場で、対戦相手が握手を求めてくる。彼が僕の手を握った瞬間、余計に眩しくシャッターが切られる。相手の目は緑。Arigatogozaimasu. You are the champion who raised me.耳元で彼はそう告げる。下を見ると僕の盤面が完成している。彼のほうの盤面は、と向こうを見ようとするも、すでに片付けられている。僕が見たいのは自分の盤面でなくいつだって誰かの盤面。いや、自分の盤面もしょせん他人が完成させた。あの片方の草鞋が。僕はあの仏間のテレビの音を聞いていた子供時代を失って、気を失う。目が覚めると小さな漁船に寝かせられていて、鴎が寄ってきているのに頭のほうの窓からの鳴き声で気づく。いつまで寝てる。僕に声を掛けに来た、船室の入り口に父らしき影が立つ。彼の両足には草鞋。僕の握り占めているのは素晴らしい貝。これが僕のみた夢
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