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基地外詩「なんでもない手段」 2016.3.17

Juan.B

※ 破滅派オリジナル作品。

タグ: #きちがい #少数民族 #死 #無政府主義 #生命 #自殺

673文字

草木が芽吹き桜が散る暖かな春のある日に

美しい木から首を吊り

 

メルヘンな動物たちや絵本から出てきた妖精が舞いそうな草原で

寝転び薬品を飲み二度と目覚めず

 

子供たちが金網にしがみ付き電車の系番を一生懸命母親に教える線路沿い

金網を越え今や減速出来ない鉄の塊に飛び込み

 

小学生の笑い声と大人の荒っぽい声と老人のあくびが混ざる白い団地の群れ

十階の踊り場は楽になるのにちょうど良かった

 

小便もウンコも気持ち良い公衆便所

小さな空間で今まで考えた事ないくらい物理と効率を追求して遂に逝く

 

 

良いじゃないか

それくらい

最後くらい

静かに

いやうるさくても良い

最後くらい

死ぬときくらい

 

 

「あなたの心配事は何?」

「夜眠れてる?」

「大切な命!」

 

そんな標語を横目に俺は駅のベンチで

かつて自らの手で自らの運命を決めたある混血の知り合いを思っていた

 

最後くらい

苦しまぬように

永遠に楽であるように

死後一切全てが都合の良い状態であるように

 

軍隊に人殺しを求めて腹を切った小説家の死には大いに涙して

何も求めないで死んだ人々は何でもないと言うのか

 

 

朝に目が覚めて

俺以外の皆が

並木道で線路でプールで学校で電線で

あらゆる地面と水中と物体の付近で

自殺していたとしても

 

楽であるように

俺もそして誰もがいずれ取るかも知れないなんでもない手段の為に

 

白くなった手でも

焼けたり膨張した手でも

若干腐敗した手でも

鉄道から飛んで来た手でも

握って祈っていよう

© 2016 Juan.B ( 2016年3月17日公開

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