私はかなりお金に困っていた
心に全く余裕がなかった
生活費をどうにかしなくちゃ、家賃を早く振り込まなくっちゃ、電気代、ガス代、水道代…とにかくお金のことで頭がいっぱいだった
…この仕事はギャンブルと一緒だ
お客様が選んでくれない限り、お金にはならない
「今日…何で私こんなに付きが悪いのかしらねぇ…?」
「そうかな?私よりはいいと思うよ、私なんてまだお客様に付いてないもん」
「…景気悪いわよね~なのに新人はガンガン入ってきて、そっちに客もってかれるし」
「うん…」
「それよりさー知ってる?」
「何を?」
「新人で、客に挿れさせて中出しさせてる女がいるらしいのよ」
「えっ!」
「ネットの店スレに超書き込まれてんのよ、その女」
「…本当にそんなことさせてるのかな?」
「まぁ嘘か本当かはわかんないんだけどさ、あの新人の女だけ付きっぱで、忙しそうにしてるじゃない?」
確かにそうだった
みんなが暇なのに1人だけいつも忙しく動い
ている新人の子がいた
私はずるいって純粋に思った
ルール違反をして忙しくしている彼女に腹が
立っていた
…でもそれ以上にお金がいっぱい稼げていい
なって思ってた
私もルール違反を犯せばお金がいっぱい稼げ
るのかなとも思っていた
何度も言うけど、私はかなりお金に困ってい
た、心に全く余裕がなかった
だから…
「久しぶりだね、元気にしてた?」
やっと私を選んでくれたお客様は以前、ずっ
と前に私に付いてくれたお客様だった
「はい、何とか元気にしていました」
「何とかか…じゃぁ若干元気ない感じかな?」
私は何となく焦っていた
「今日はノグチさんに逢えたから、かなり元気になりましたよ」
「あれ?嘘でも嬉しいね、君の口からそんな言葉が聞けるなんて」
「 … 」
ノグチさんにまた来てもらわなくっちゃって、
それだけが頭の中をグルグル回っていた
お金のためなんだからって、お金が欲しいっ
て、また来てもらって稼がなくっちゃって、
私の頭の中はそのことばかりになっていった
「逢えて嬉しいよ」
そう言ってノグチさんは私の上に乗り、私を
ゆっくりと攻め始めた
どんなに触られても舐められても、全くカン
ジなかった
…でも一生懸命カンジているフリをした
「 … 」
「今度は私から…」
私はノグチさんを丁寧に舐めたり触ったり、
咥えたりした
「…もう一度僕の方から攻めてもいいかな?」
そう言ってノグチさんはまた私を攻め始めた
「あっ…」
私はノグチさんが苦手だった
まず外見が汚らしかった、加齢臭も半端ない
し口臭もあった
小太りで汗を掻きやすく、上に乗られたとき
に落ちてくる汗が頬に伝うのが気持ち悪かっ
た
そんなおじさんに触られるのも触るのも嫌だ
った、舐められるのも舐めるのも嫌だった
でも…私にはお金が無い…生活していくため
のお金が無い
私はノグチさんに身を委ねた
「…今日の君は何か変だね」
「えっ…?」
「僕が知っている君はそんな風に演技するような子じゃなかったし、キチンとサービスする子だった」
「 … 」
「僕は挿入したいわけじゃないよ、君の真面目で純粋な人柄が気に入って、もう1回逢いに来たんだ」
私は嬉しかった
そんな風に言ってもらえて、何かが救われた
気がした
「ありがとうございます」
私はノグチさんに身を委ねるんじゃなくて、
心を委ねた
挿入なんてしなくても普通にお互い気持ち良
くなれたような気がする
「ありがとう、今日も気持ち良かったよ、またね」
「 … 」
その言葉を聞いて、私はまた濡れてしまった
end
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