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青いミルク1

青いミルク(第1話)

三沼薫

青い空に白い雲が溶ける。それは青いミルクだ。

小説

10,677文字

んでもって俺ちゃんの脳からしたたり落ちるミルクが、手に持ったマグカップの内部で揺れてるコーヒーに入った気がした。ブラックはダメだ、ミルクと砂糖をたっぷり使ったカフェオレじゃねぇと俺は満足できねぇ。ブラックコーヒーなんてのはさ、ゲロみてぇなクソみてぇなヘドロみてぇな味がしやがるのさ。浮遊だ浮遊、カフェオレが宿してるカフェインっていうソフトドラックが脳に作用して浮遊感が全身を包みこんじゃうのよねん。脳内にカフェオレをキメろ、キメろ、キメろ。宇宙にトリップするような最高の感覚を求めて求めて止まない僕ちゃんに栄光が降りそそいでくれば、降りそそいでくれれば、俺ちゃん脳内宇宙旅行ができるのになぁ。なぁなぁなぁ何となく猫ちゃんの映像を思い浮かべちゃった。黒光りしたどでかいグランドピアノの鍵盤の上を高速で走る猫ちゃんの映像だ。カフェインと猫ちゃん、パパにはウイスキーとタバコ、ママにはスイーツとSNS、そしてそしてそして妹にはYouTubeと飴玉。虹色をした飴玉が脳内で爆発するような感覚になっちゃって、顎が溶け落ちそうな気分だね、って語尾に音符マーク付きで言いたい。けどけどけどけど、本当に俺ちゃんって今まさにそれほどご機嫌な気分なんだろうか、ってな疑問があって、疑問符が頭上でくるくると回転してるって感じ。すべての破壊を目論む俺の脳内で起きてる事象、事象、事象を手中に収めて事象、自傷、次章ってな感じに韻を踏んで遊んでもう最高だ! んでもって加速して加速して加速して加速する思考の渦巻きに巻き取られた俺ちゃんの理性。思考は回転式の機械で、その内部に取りこんだものすべてを粉々にしちゃうのさ。粉砕した概念の欠片が飛散する場面を思い浮かべるのは堪らねぇもんがあるぜ。んでカフェオレを飲みまくって飲みまくって飲みに飲みまくる俺ちゃんの内部には概念ってもんがあるんだろうか、そもそも概念ってどういう意味だって混乱状態、ついでに混沌、さらに荒廃。うらぶれた遊園地に妹と一緒に行きたいっていう願望がありまくり。それくらい俺は実の妹が好きで好きで好きで好きで堪らねぇ。限りなく愛情の念に近い恋心とでも表現すれば適切かもしれねぇ。まぁまだ二十代の俺ちゃんには愛と恋の違いがよく分からねぇんだけどね。歳を取ったら、老人になったら、愛っていう一つの命題の真理を解き明かせるんだろうか、解き明かさねぇんだろうか、まぁどっちだっていいやそんなことは死んでしまえ人間ども腐れ類人猿、って呪詛を吐き散らす。窓ガラスから透明な陽光が差しこんで、室内を浮かび上がらせるみてぇに照らしちゃう。照らしちゃうんだ。まろやかでクリーミーで刺激的なカフェオレの味は他には代えがたいものがあるのよねん。猫が窓辺で日光浴をしてるのを可視した俺ちゃんを可視した太陽を可視した宇宙を可視した創造主ってな感じ。創造主って本当にいんの? まぁいてもいなくてもどっちでもいいかぁーそんな下らねぇ命題について考えても時間を浪費するだけかぁー。でもでもでもでも俺ちゃんってば現在進行形で掛けがえの無い時間を浪費しちゃってる気がするのねん。いやいやいやいやいやいや、掛けがえの無い時間だから俺はまったりと時間の流れるままにのんびり過ごしちゃってるってわけ。んでもってこの部屋という空間はこれ以上ないくらい散らかってて俺の心の乱れを反映してるみてぇな状態になっちゃってる。なっちゃってるんだ。ゴミ袋の山、山、山、が積み上がって登山が出来そうなくらいだぜ。富士山、エベレスト、チョモランマ、って感じで山積してるゴミ共。天井に届きそうな勢いだ、ってほどでもねぇけど、かなり散らかってる。けどけどけどけど、この乱雑な異臭のする空間がとってもとっても落ち着ける俺の俺だけの聖域なんだ。バロって名の飼い猫は鼻が鈍感なのか俺の部屋でくつろいでる事が多い。猫ってもってもっともっともっともっと清潔な整理整頓が行き届いてる空間を好むんじゃなかったっけ? バロは頭がイカレてるのかもしれねぇな、俺ちゃんの正常なまっとうな理性的な頭脳とは真逆の脳の構造をしてるのかもしれねぇな。だって何年も干してない布団なのに、にカフェオレの染みが点々とまだら状に付着してんのに、ここで寝転がってるんだもん。あれあれーさっきまで窓辺で日光浴をしてたんじゃなかったっけ。バロちゃんってば空間を一瞬で行き来できる神秘的な生き物だったのかもねん。ってんな訳ねぇよマジでマジでマジでマジでさぁ。俺がカフェインを脳内にキメてトリップしてる間に移動してただけだろ。真実はいつも一つってアニメの名探偵が言ってたセリフを口にしそうになるものの、その代わりにカフェオレを口にした。マグカップの冷ややかな感触が俺の下唇を押しつぶし、それを傾けると口内によく冷えたカフェオレが流れ込んでくる。そう滝みてぇにね、そう濁流みてぇにね、そう天の川みてぇにね、ってそんな比喩を脳内で用いちゃう俺ちゃんは詩人の才能がありまくり。んでもって猫を銃殺したくなった。拳銃と銃弾が今の俺に必要不可欠な気がするが、そんなもん何処で手に入れたらいいんだ? そんな物騒なもん何処に売ってるんだ? そもそも拳銃なんて所持したら銃刀法違反になっちゃうんじゃねぇか? じゃあ他に凶器になるものは何だ、包丁か、ナイフか、フォークか、スプーンか。スプーンじゃ目玉をくり抜けるだけで人は殺せねぇ貧弱な凶器とも言えない代物じゃね? スプーンならマグカップの中のコーヒーと砂糖とミルクを混ぜたものがテーブルの上に置いてある。俺はマグカップを置いて、代わりにスプーンを手に取って先端の丸い部分をながめる。滑稽に歪んだ俺の顔が映ってて、自分の容姿の醜さを自覚せずにはいられねぇ、ってかスプーンに映った顔なんて誰だって不細工になるだろ。マジでマジで本当に本当に。ママは潔癖症で俺ちゃんの住むこの一軒家の共有部は綺麗に掃除が行き届いてる。凶暴な太陽の光がフローリングの床で乱反射しそうなほど綺麗だ。美しい、と表現したら適切なほどママの家事能力は凄まじいものがある、ってかそれだけが取り柄みてぇなつまらねぇ女だ。あんなの家畜だ家畜。四十代のママは美人の部類に入るだろうが、俺ちゃんそんな事どうでも良いんだもん。パパとママがセックスレスだって事実を知ってる賢い僕ちゃん。バロが俺の膝の上に寝そべってノドを鳴らしてきたので、愛情を示してやるために顎の下を撫でてやる。滑らかな毛の感触は心地よくって、バロはママと同様綺麗好きでよく毛づくろいしてるのを見かけちゃう。なんでこんな綺麗好きな猫が俺ちゃんの部屋になんているんだろう。不思議だ、不思議過ぎる。謎だ、謎過ぎる。このスプーンで猫の眼球をくり抜いてそれを宝石に見立てて収集するってな感じの話をどこかで聞いたことがあるのを思いだしてる俺ちゃんの脳裏に浮かんでるのは回転する惑星の映像だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! バロの顎の下部にある毛におおわれたほっそりとした首を絞めてみたいっていう欲望に取りつかれそうになるもののそれを振り払うため思考の加速。んで柔らかな毛の感触を楽しんでる俺ちゃんの目の前にはゴミの山。ここが俺の俺だけの城だ。ネットゲームをして暇を潰すか、漫画でも読むか、録画した深夜アニメでも観るか迷っちゃうのよねん。俺は発作的に猫の首に手をかけた。そしてゆっくりと力を込めようとするものの、指先が痺れて動かねぇ事実に気づいた。カフェインをキメ過ぎたかな。でもバロを殺さないで良かった良かった。猫を殺すなんて真似優しい優しい俺ちゃんには到底できねぇよ。生き物は殺すために存在するんじゃねぇ、愛情を注ぐために存在してるんだ、って綺麗ごとを並べ立ててみたところで俺は菜食主義者じゃねぇ、牛も豚も鶏だって食う、食う、食う。ああ、空虚だ、俺には何もねぇ、胸の内側ががらんどうだ。決定的な何かが俺の生活には欠けてるって自覚はあるのよねん。クソだ、腐敗だ、退廃だ。俺の惰性に彩られた日々は、ひび割れた精神の隙間から徐々に浸透して行き心を腐らせる。何者かになりてぇ、ってのは男の子なら誰もが一度は考えたことがるだろうが、男の子っていう年齢でもない僕ちゃん、二十三歳の僕ちゃん。来年になったら二十四歳で、人生の節目に差しかかってる気がする。でもそれは気がするだけで、人生の節目っつぅのは人それぞれ違ってて、いやなんていうかそんなどうでも良い事柄脳から払拭してしまえ、って感じ。もっと有意義な時間の使い方をしてみてぇもんだね。してるじゃないか、カフェオレを飲みながら愛猫を膝にのせて戯れてるじゃないか。でも一瞬だけど愛する愛するバロを殺したいって思ってた俺ちゃんは罪深い哀れな子羊ちゃんなのかもしれねぇ。罪には罰を、罰には仕返しを、ねぇ、俺ってまだ理性的だろ? ってここにはいない創造主に脳内で語りかけちゃう時点で俺ちゃんってば脳の回路がイカレてるのかもしれないのよねん。んでもってマグカップの中のカフェオレを飲み干すとノートパソコンを起動させてネットゲームで遊ぼうとした、ところでドアが開いてママが顔を覗かせた。「汚い部屋ねぇ。掃除するからちょっと部屋から出てて」俺ちゃんの神域に侵入したこの雌豚をくびり殺そうと思ったが、そんな衝動は押しとどめて冷静に言う。「ママは今日も美人だな。胸も尻もでかいし興奮してくるよ」本当はまったくこれっぽっちも塵ほども性的興奮を誘発させられはしねぇんだけど、とりあえずお世辞をのたまっちゃう。俺ちゃんの言葉を真に受けたママは掃除機を指先で弄りだして頬を染めそうな勢いだ。そのガラス玉じみた瞳が感動の涙で潤んでる気がする。でもでもでもでもガラス玉じみた瞳だなんて比喩、あまりにも滑稽じゃね。滑稽なのは俺の比喩じゃなくてママの挙動だ。「もう、母親をからかっちゃダメ」年甲斐もなくメッて叱ってくるママを呪い殺したくなっちゃった。俺は立ち上がると、ママの傍に行って掃除機をかつては若々しくみずみずしかったであろう骨の浮き出たその手から取り上げて床に放るとママの乳房を服越しに揉みしだいた。「またこの部屋でやるのぉ?」そんなママはまっすぐに見つめる俺ちゃんのお目々から視線を反らし両手の指先を弄りまわして何かを期待してる素振りをする。いくら美人だとしても実の母親を抱くだなんて吐き気がしちゃうね。まぁこれはパパに対する復讐のひとつだから俺は定期的にこうしてママ相手に戯れを仕掛けてる。韓流スターに似てる俺ちゃんの顔立ちはママの好みなんだろう、って容易に手に取るように分かっちゃうのよねん。汚らしい部屋で、カフェオレの染みが付着したベッドでママと全裸で絡み合うのは反吐が出るほど嫌だ。だけど、だけどさ、これは復讐なんだ。ママとセックスに興じないと俺の憎悪は解消されねぇよ、実際のとこさぁ。ママ、ママ、ママ、ママ、僕ちゃんを甘えさせてたっぷりと脂肪の詰まった乳房からミルクを飲ませてくれないか、って思うわけねぇ。俺がカフェオレより飲みたいのは妹の母乳だ。だから孕ませるならママじゃなくて妹を身ごもらせなくちゃならねぇ。その計画が俺の脳内で着々と進行してる気がする気がする。いや、気がするだけじゃなくて俺は妹を自分に惚れさせるための計画を練りに練ってる。そう、綿密にね。そう詳細にね、そう理性的にね。数秒でオルガズムに達したママは掃除をそっちのけで薄汚れた布団の上で荒く呼吸してる。あれあれ―いつの間に性交なんてかましたんだ? トドみてぇに豊満な身体の女が俺の布団で全裸でうつぶせになってるよ。ああ、こいつは実の母親だったね。ママ、今日もお勤めご苦労様。俺の復讐に付き合ってくれてありがとね、って語尾にハートマークを付けて投げキッスと共にママに送っちゃっても良い気分。トドはゆっくりと身体を回転させて状態を起こす。二つの果実じみた乳房を下品な赤いブラジャーで覆ってる最中だ。なんて愚鈍な女なんだ。これほど単純な雌なら手玉に取るのは容易だけど、ママとは対照的に妹の場合は一筋縄じゃいかねぇ。まぁ俺ちゃんを翻弄してくるそんな性格に魅かれてるのさ。幼少の頃から俺を弄んでくる妹の性格は十八歳になった今でもまったく変わらねぇ。一度はあのほっそりとした幼児体型なきめ細かい肌を手中に収めて好き放題してみてぇもんだ。翻弄だ、翻弄、ママを翻弄してる俺が妹に翻弄されちゃってるって構図が出来上がってる。そこにパパも入れるとこの家族の力関係はより複雑になって来る。ママ、俺ちゃん、妹、パパ、って順番の上下関係って簡単に言えるほど物事はシンプルじゃねぇんだけどね。「掃除はいいから、昼メシ作れよ」ブラジャーとパンツを着用して今度は上着を着ようとしてるママに向けて命令する。「いやよ、セックスして疲れてちゃったし……」拒否してはいるものの語尾は尻すぼみになってくママの口調、んでもって俺ちゃんはママの頬をつかむと染みを化粧で隠したその肌をつねり上げた。「命令だ、命令。もうセックスしてやらねぇぞ」「痛いっ!」苦痛に顔面を歪ませつつも紛れもなく喜んでるママ。この女は生粋のドMなんだって知ってる僕ちゃんの頭を妹の素晴らしい芳香が漂う手で愛撫して欲しい。ママには俺ちゃんが妹に恋心を持ってるって事実を知られちゃいねぇ。この女はMのくせに独占欲が強いから俺の胸の内側に宿る淡い炎じみた感情を察知したらどんな行動に出るか分かったもんじゃねぇ。俺はママから離れるとパソコンの前に座ってYouTubeを鑑賞するためにマウスを動かした。滑らかに動く高額なゲーミングマウス。ゲーム用にママにねだって買ってもらった究極の一品だ。でもでもでもでも今はセックスでちょっとだけ疲れたからゲームをするほどの集中力はねぇ。この家の屋根から打ち上げられた俺ちゃんの集中力っていう名の花火は遥か上空で爆発すると色とりどりの光をまき散らす。そんな場面を思い浮かべて白目を剥きよだれを垂らす俺ちゃんの脳の回路、回路、回路。脳に差しこまれた歯車は高速で回転し続けるんだ。潤滑油は妹の愛液、ってな感じだけど、俺ちゃんあのメスガキの分泌液を一度も拝んだことがない。何て哀れなんだ俺ちゃんって奴は。まぁなかなかヤラせてくれないそのもどかしさが俺ちゃんの恋心に火を点けるんだけどね。情熱的な恋を一度はしてみえぇもんだぜ。今まで妹よりも可愛いと思った女はいねぇ。家族っていうフィルターを通しても通さなくても客観的に見て妹は相当な美人だ。子供の頃はもっと平凡な顔立ちだった記憶が俺の脳の奥深くでイビキをかきながら眠ってるけど、どんなマジックを使ったんだろう、今の妹はAIと見まがうほど可愛い。神が創り上げた奇跡的な造形物、とでも表現したら適切かもしれねぇな。あのすべてを吸引するようなブラックホールじみた瞳も、触れたら全身に電撃が走りそうな肌も、コンディショナーを欠かさない艶やかな長髪も、すべて俺のものにしてぇよ、マジで、実際のとこ、ほんとんとこ。でもでもでもでもそれが手に入らないもどかしさときたら発狂しそうなほどの情念が俺の内部で発生しそうなほどだぜ。オルガズムに導き、噴射した潮を顔面で浴びてぇっていう俺ちゃんの願望、願望、願望。そんな貪欲な願いは粉々にしてしまえ、ってバロが悪魔じみた囁きをしてきた気がした。バロは猫の言葉しか話せねぇけど、たまに人間の言語を話せてコミュニケーション出来たら楽しいかもしれねぇ、って思う時もあるのさ。闇、闇、闇、俺の眼前に俺の未来に俺の将来に転がってるのは亡骸じみた闇だ。破滅を望んでんのか、妹と一緒に自殺してぇと思ってんのか、それともそれとももっともっともっともっと異様な事態を望んでんのか俺ちゃんは。それは今のところ俺にも分からねぇ未知の領域だ。俺は未来が見えねぇ、予測できねぇ、想像できねぇ。そんな自分を哀れだとは思わねぇけどね、って注釈を付けて遊んだ。ミルクだ、ミルクが足りねぇ。したたり落ちる白濁した液体は俺の未来から逸れて枝分かれした別の道に落下しちゃった。ママがメシを作りに部屋を出ていくとこだったから、その腕を取り、こっちに振り向かせるとその顔面に舌を這わせる。俺ちゃんの蛇みてぇな生き物じみた長いベロは、化粧の味を鋭敏に感じ取る。厚化粧しやがってブスがデブが化け物が、って呪詛をつぶやこうとしたところで、老いてはいるけど美人の部類に属するママ、料理上手のママの出した食事を早く早く早く早く咀嚼してぇ、ってぐらい俺ちゃんの胃は貪欲な状態。んでもってママは俺の腕のなかで力を抜きされるがままだ。でもでもでもでもお遊戯はこれ以上進行させない。二回戦をするぐらいの体力はあるがここは焦らしたほうが賢明だ。俺ちゃんは何て頭脳明晰なイカした男のなかの男なんだろうね。雌にはエサをチラつかせるだけチラつかせて、与えないって手法を取るのが恋愛におけるテクニックだ。テクニシャンな俺ちゃん。ベッドの上でも概念でも実生活でもこれ以上ないくらい技巧的だ。んでママを部屋から押し出す。部屋を出る時のママの物欲しそうな表情と言ったらないぜ。その顔だけでカフェオレを十杯ぐらい飲めそうだぜ。まぁそんなに飲んだらカフェイン中毒で死んじゃうかもしれねぇから止めとくけどね。バロの奴もママと一緒に出てった。光の速度を越えた動きをする猫に愛しさを感じながら俺はパソコンの前に戻った。何て機敏な動きをする猫なんだ。凄まじい身体能力だね、って語尾に音符マークを付けて賞賛したい。俺ちゃんってば妹の次にバロを愛してるんだ。そうだな、ママに対する愛情は一欠片くらいはあるかもしれねぇ。だってそうじゃなきゃセックスしてやらねぇもんね。戯れで性交してる時点で俺は少しくらいはママに愛情の念を抱いてるのかもかもかもかも鴨。ママはもうパパに愛情を抱いてないんだ、ってのがその挙動を見てれば手に取るように分かる。かつてパパに向けられてた愛情はすべて俺ちゃんに注ぎ込まれてるっていう自負がある。ママの肛門の臭いはエスプレッソみてぇに苦味を前面に押し出したもんだ。俺ちゃんは自分のケツの穴に指を入れて臭いを嗅ぐっていう性癖がありまくり。その日の健康状態によって肛門の臭気も違うから、今日は誰々の肛門の臭いだな、今日は何々さんの肛門の臭いだな、って想像してみるととってもとっても興奮しちゃうから全人類に真似して欲しいね。じゃあ俺の愛する愛する妹ちゃんの肛門の臭いはどんな感じなんだ、って疑問がシャワーみてぇに頭上に降りそそぐ。脳内シャワーでトリップして肛門の臭いを鼻腔にキメろ。ゆるやかな目まいがする。脳の神経が切断されて、植物人間になったみてぇな静かな状態が俺ちゃんの時間を塗りたくる。一時的に脳の切断をした凶器は架空の透明なナイフだ。これは誰にも、俺自身にすら可視できない希少価値の高い一品。んでもって速度を上げて空気の膜に衝突して木っ端みじんになっちまえ! 粉みじんになるのは俺ちゃんの理性で、あぶり出されるのは純粋な獣性。透き通った獣の心を思いだせば、俺ちゃんも理性なんてわずらわしいもんかなぐり捨てて野性的な生き方を出来るのかなぁ。ママの料理する音が二階にまで響いてくる。リビングのドアを開け放って料理してるんだろう、包丁がまな板を叩く音や、油をしいたフライパンに玉ねぎを落下させる快音が俺ちゃんの鼓膜に直撃。んでもって良い匂いがここまで漂ってくるから俺ちゃん涎が出ちゃいそうだぜ。早く早く早く早く食べたい食べたい食べたい食べたい。何でも良いから固形物の溶けた空腹の胃に食べ物を摂取してぇよ。消化をつかさどる俺の臓器にはカフェオレしか注入されてねぇから食事を取らなくっちゃいけねぇ。俺ちゃん働いてるけど一人暮らしはしないで親元に寄生しちゃってる。寄生虫な俺ちゃんはバロの肛門からヌルリと出て来た白くて細くてうねる生き物を思いだしてる最中だ。猫はその体内に寄生虫を宿してるってのは周知の事実。んで俺ちゃんの脳内に寄生してるのは悪魔の囁きだ。殺せ殺せ殺せ、とくり返しくり返しつぶやく悪魔の声。まぁ本当はそんな奇妙な声まったく聞こえねぇんだけどさ、ただの戯れでそう想像しただけじゃん。そう想像って韻を踏んじゃってるね、猫踏んじゃっただね、外では自動車が動物を踏んじゃってるのかもね。車め、車のヤロウめ、軽々しく動物を殺しやがって。俺ちゃん猫や犬を轢くのが死んでも嫌だから車の免許は持ってねぇ。バイクなら、バイクなら軽やかに車道に飛びだして来た小動物をかわすことが出来るのかもしれねぇ。まぁ一応原付の免許だったら持ってるんだけどね、って注釈を付けて遊ぶ俺ちゃんの思考が一時的に断絶される予感がした。料理をトレーに載せて持ってきたママに向けて投げキッスをしちゃう。ママはそれを軽やかにかわしそうになりつつも右頬で受け止め、ちょっと動きを停止させたあとでテーブルの上に料理を置いた。俺は猫舌だから料理が覚めるまで待つあいだにママの尻を鷲づかみにして遊んだ。お遊戯中のお遊戯、戯れ中の戯れ。この家は一時的に概念的な遊園地になっちゃってるのかもねん。的に的する感じ的さぁ。ママの唇を俺の舌でネジ開けて生き物じみたベロを口内に押しこんで遊ぶってのもいいんだけど、この雌豚とのセックスは飽きに飽きてる。とっくのとうに作業みてぇな行為に成り下がっちゃってるんだ。「もう用はないから出てけ」「何でそんなに冷たいのよ」命令したのにまだ俺の城に居座るつもりかこの女は。料理を持ってきた時点でもう用なしなんだよお前なんて。でもでもでもでも優しい優しい俺ちゃんは雌豚の乳房を軽く揉みしだいてやるっていう親切を発揮してやった。こいつの下着に包まれたオマンコからは大量の分泌液が出てるんだろう。生理の時だろうが危険日だろうがお構いなしにセックスにふけってるからその内俺のガキを身ごもるんじゃねぇの。まぁそんな事はどうでもいいけどね。そしたら目玉が三つあって片手の指が十本もある奇形が産まれるんだろうか、知的障害者が産まれるんだろうか、孕んだらすぐにでも堕胎させるつもりだけどね。ママとの子供なんてこれっぽっちも欲しくねぇ。俺が愛情を注ぎたいのは妹とのあいだに出来た子供だ。男の子かな、女の子かな、って妄想してると楽しくなってきて涎が口の端からたれ落ちてきそうだぜ。今のところ妹は俺に手を握らせる素振りすら見せねぇ。彼女を俺に惚れさせるには膨大な時間が掛かりそうじゃん。まぁ気長に計画を進行させるつもりだけどさ。俺が妹にべた惚れなのをまったく知らねぇであろう哀れな雌豚が目の前で物欲しそうに俺ちゃんを見てる。女を虜にする俺ちゃんの端正な容姿、容姿、容姿。ハンサムな俺はこの見てくれを用いて数々の異性を落としてきたけど、本命だけが手に入らないって歯がゆい事態になっちゃってる。セックスで得られる快感もつまらねぇなって思うようになってきた。クソゲロヘドロが。妹を除く地球上の女なんて俺にとっちゃただの穴が開いた土偶だ。妹は個性的な顔立ちの雄を好む傾向があるのかもしれねぇ、って俺は踏んでる。そうじゃなきゃとっくのとうに妹は俺の拳銃によってその処女膜を破瓜されてるからだ。もし妹が俺の手に堕ちたら、俺の張り巡らせた蜘蛛の巣にかかったら、俺の罠にはまったら、俺は彼女を手に入れた満足感で腹が満たされてすぐにポイ捨てしちゃうかもねん。俺は数々の女を捨ててきた経験のある罪深いイカした男。狂ってるのは俺じゃなくて俺以外の全人類、って考えてる時点で俺ちゃんってば狂人に類する人物なのかもしれねぇ。「とっとと出てけクソ女!」まだ居座ろうとする雌豚のでけぇケツを蹴って部屋から永遠に追放しちゃった。もう二度と俺の部屋にこの女を入れることはないだろう、ってな感じの勢いを発揮しちゃってる俺ちゃんの鬼みてぇな形相、形相、形相。顔面の筋肉が歪んでるのが自覚できるから俺の表情は悪鬼のみてぇになっちゃってるハズだ。鬼の仮面を被った俺ちゃんに怯えてる雌豚の滑稽な表情をさかなにカフェオレを一杯ひっかける。んで食事に取り掛かろうとしちゃう前に他にするべきことがあるんじゃねぇかなって思案する。とりあえず洗濯機からくすねて来た妹の下着を被って深呼吸をしてみる。鼻腔に直撃する雌の臭気に俺ちゃんの拳銃が天井を向くのを実感する。熟女の布切れとはかなり違う甘酸っぱい香気に酔っぱらっちゃいそうなのよねん。イチゴ柄の妹のパンツ、まだ十代だから色気のある下着なんて持ってねぇ、ってのがユリの部屋のタンスを漁って分かった衝撃の事実。この俺ちゃんのために紐の下着を所持してたりはしてねぇ、ってのが何だか萎えてくるような笑えてくるような憤りそうになるような感じ。まぁ可愛らしい下着に身を包んだユリの姿を想像してると興奮してくるけどね。アレをぶちこんで楽器の音色みてぇなあえぎ声を響かせてぇよ、実際のとこ。妹のあえぎ声は電子的な楽器じゃなくてアコースティックギターやグランドピアノみてぇな古典的な楽器から発生する音だって今まさに俺ちゃんが決めちゃった。ああ、興奮するんだろうなぁ、チンポコが硬く勃起しちゃうんだろうなぁ、脳が爆発するような快感が得られるんだろうなぁ。俺は快感っていう猛獣に捕食された哀れな小動物、ってとこかね。あれあれー、って事はユリちゃんってばあんなに可愛らしい容姿をして猛獣の類だったのぉーって勘違いしちゃいそうになっちゃう。あんなに美しい少女が猛獣なわけねぇ、妖精だ、天使だ、宝石だ、太陽だ、宇宙そのものだ。柔らかな肌に歯型を刻みつけて遊びたいと思ってる俺ちゃんの脳内で回転し続けるデフォルメされた五角形の星、星、星。んでもってユリっていうキラめく星クズを俺ちゃんっていう器で受け止めてぇ。俺だったらどんなお前でも受け入れる包容力がありまくりだぜ。だから俺ちゃんとお前は結ばれる運命だ、そう前世から決まってたんだ、ってロマンチストじみた俺ちゃんの思考。思考が溶解し、一滴の涙となって俺の眼球から流れ出ない。俺が涙を流す時はユリが初めて俺とセックスした時に違いねぇ、って思ってる節が俺にはある。涙なんて簡単には流れねぇのよ。

© 2026 三沼薫 ( 2026年8月1日公開

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