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花なき國の灰華

無花果回

燃やされたもののあとに降る灰を、われわれはいつから「花」と呼ぶやうになつたのか。祈りと讃美の身振りが破壊そのものを美へ変へてしまふとき、この國の空には桜ではなく、灰華がしんしんと降り積もる。

タグ: #詩

398文字

灰華はいかよ、灰吹雪よ
われわれの空を埋めつくせ

 

散ることばかり巧みになつた
この國に
桜は、もう
似合はない

 

しろがねでも、ましろでもなく
くゆりたるものから咲く花
焼け跡の上にしんしんと積もり
触れれば消ゆる
無季のはなびら

 

水も、土も、いのちも要らず
ただ燃やしさへすれば
降つてくる

 

われわれは手をたたいて
花を散らす
うつくしい、うつくしい、と
唱へ合ひ

 

掌のなかの光に灰を写しとつて
名も知らぬ千の目に手向け
ありがたう、と頭を垂れる
ありがたう、ありがたう

 

燃やしてから祈り
祈つてから讃へる
讃へるほどに
灰は深くなる

 

灰華よ、灰吹雪よ
おまへたちの美しさには
もう、かなはない

 

われわれの目の中で
燃え尽きるまで
ふりしきれ、ふりしきれ

 

灰華よ、灰吹雪よ
未生みしょうきょうのごとく
わが亡きあとの空にも
たれかの瞼のうらにも

 

しんしんと
しんしんと

© 2026 無花果回 ( 2026年5月9日公開

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