#noveljam の夜。はじめてのお泊りに不夜城の夜は更けゆく。って寝ないのか

平成八王子事変*ストラタジャム2018*戦略レポート(第3話)

波野發作

ルポ

2,626文字

初日の会場を後にし、宿舎へ移動。部屋割りからのチェンジそして不夜城とギターと昔話。何時までプロット考えてんだよ。

2018年からNovelJamは合宿形式になった。

昨年は米田氏とブルトレホテルに泊まったのだったな。今年は別のチームになったが、しっかりやっているだろうか。

初日の会場を撤収するときは雨が降っていた。慌ててクルマを回し、荷物を放り込んだ。

その足でコンビニまで買い出しにいき、少し遅れて部屋に向かった。

 

部屋割りはチーム分けの終えたあとで運営が決めていた。

基本的に同じチームにならないように配置される。

これは全員が同じチームで同室にできないため、公平性を保つために「全員別チーム」ということで設定したとのこと。

その後どうするかは「個人の裁量に任せる」とのことだった。

 

ぼくの部屋はチームDの編集・ハギヨシさんだ。

ハギヨシさんは先々週一度お会いしているので気が楽だ。

人当たりの良い方で、とても過ごしやすい。

とりあえずストロングゼロを開け、ツマミを出した。

ハギヨシさんは焼酎を持参していたので、軽く乾杯をした。

 

ハギヨシさんはずっと何か打ち込んでいた。プロットの整理でもしているのだろうか。

ぼくもプロットの確認をしておこう。あと、シャワーも浴びないとな。

パソコンをセットするのも起動するのも面倒だったので、スマホでプロットを表示、させようとしたところで景虎氏からメッセージが来た。

 

『どこか書き物できる場所はありませんか』

 

話を聞けば、もう少しプロットを整理したいのだが、同室の方がもう休みたいらしく、そうなると中途半端で寝なければならない、うんぬんとのことだ。なるほど。それは仕方ないよな。

幸いぼくは電気つけっぱなしだろうが、一晩中誰かが横で何をしていようが、どこでもぐっすり眠れる超安眠体質である。

ぼくが同室なら思う存分書けるだろう。

そこで、景虎氏の同室の人に相談してもらって、ぼくと彼とで交代してもらうようにお願いした。

 

すぐに景虎氏と同室だったチームCの森山氏が快諾して現れたので、ぼくはざざっと荷物をまとめ、部屋を代わってもらった。

ツイッターに軽く、部屋をチェンジした旨を上げたところ、ギター作家の澤氏が流浪の民と化していることがわかったので、不夜城にいらっしゃいと声をかけたところ、本当に現れた。ギターを背負って。

その後、喫煙所で居合わせた高橋氏も合流して、にわかに深夜の男子会が成立してしまったのだ。

 

澤氏のギターをBGMに、高橋氏が武勇伝を語るのだが、これがまた面白く、酒が進む進む。

しかし、盛り上がりすぎて、景虎氏のYouTuber時代の映像まで飛び出したところでとっくに丑三つ時もすぎ、そろそろ寅かという時間帯にが迫っていたため、男子会はおひらきとなった。

 

俺もシャワーを浴びて、と思ったが、お湯が出ない。いつまでも出ない。

なんということだ。ひとまず諦めてベッドに戻った。

明日朝なんとかしよう。

 

景虎氏はまだ寝られないようで、プロットの話を続けていた。

さっきは天皇陛下が不老不死になって平成が終わらなくなる、みたいな話をしていたのだが、ぼくが離脱しているうちに、まったく別の話にまとまっていた。

天地創造とその後の顛末から、世界が再び天動説の世界に戻されるという愉快な話であった。

構成をどうするかという具体的な相談になってきたが、起承転結はもう流行らない。

やるなら三幕構成だ。しかし要素的に足りない。ならばいっそ五幕構成にしたらどうか。なんてな。1万字に五幕はちょっと大変だろう。

なんて話をした。

 

ぼくはぼくで、とりあえず夜中のうちに表紙のプランの方向性でも決めておきたかった。

まずは一案ずつ具体的に示して、反応を見たいからだ。

ぼくはこういうとき、ラフを起こさない。落書きもナシだ。特別な希望があるのでもなければ、中途半端なラフ画は、却ってお互いの認識をブレさせることがある。これはぼくのデザイナーとしての浅い経験に基づいた判断ではない。25年の編集経験から培った、「発注」のテクニックである。

野崎さんには、今夜のうちにプロットを読んで、明朝ざっくりした下案を出しますね、と言ってあった。

彼らはまだプロットのまとめに手一杯で、表紙までは意識が回っていないのだろう。

 

僕は自分で本を書くとき、真っ先に表紙を作る。そうすると一気に内からいろいろなものが湧き上がってくるのだ。

だから明日はできるだけ早く表紙を形にして見せてあげようと思う。

具体的なイメージは、創作を加速させ、さらにはブレも少なくできるからである。

まあ、景虎氏とふくださんがそういう執筆方法かどうかはわからないけれどね。

 

景虎氏の方は、タイトルが決まっていた。『バカとバカンス』。

バカンスなのかホリデーなのか、ウィークエンドなのか、いろいろあったが、ゴロがいいのでこれになった。

「バカバカンス」という映画があるようだが、古いし知名度も低そうだし、完全にかぶっているわけでもないので気になくてよさそうだ。

作者は、天動説の世界図のような亀にフラットな世界が乗っかっているような、そんなイメージを表紙画に希望していた。

PDかフォトストックで探せばありそうなのでとりあえず候補としておいていいだろう。

 

しかし、ぼくには今回のどちらかの作品で使ってみたいネタがあった。秘策と言ってもいい。

まずはそれを試してみよう。気に入らなければ他のネタにすればいいことだ。

 

ふくださんのプロットをのぞいてみる。

児童虐待のような重いテーマを、ちょっとラブコメ風に仕上げているのか。

いや、違う。なんだこの結末は。なんだとー!

まさかのサスペンス。この娘、可愛い顔してやりおるわ。まったく油断していた。

タイトルは未定のようだ。明日のデザインのために仮タイトルを決めておかねばならんな。

あんまりトンチンカンなタイトルであとで作業が二度手間になるのはまっぴらだ。

仮に採用になっても勝負に出せるものにして置かねばならない。

 

普通にいけば、結末をある程度想像させるようなものがいいのだろうが・・・。

子供をリサイクルして里親に出す、という発想。これは秀逸だ。主人公たちの境遇に直接は関係ないが、物語の根幹をなしているといえよう。

ぼくはスマホのメモに『リサイクルキッズ』と書いて眠った。

今日の仕事はこれで十分だ。

 

デザイナーは、ヒマだな。

 

 

つづく

2018年2月18日公開

作品集『平成八王子事変*ストラタジャム2018*戦略レポート』第3話 (全9話)

© 2018 波野發作

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