野鳥を撮ろうと集まった人だかりを抜けて、三宝寺池にかかる橋を渡っていた。
コナラの枝が騒いでいて、池に浮かぶ蓮が揺れている。
風が強く、冷たくなっていた。
ゴイサギが静かに羽を休めるそばを、鴨の親子がすいと泳いで、
その上を烏の鳴声が、連なり群れをなしていく。
こちらで鳴いて、そちらで鳴いた。そちらで鳴いて、あちらで鳴いた。
城跡のそばは烏の巣になっているのだから、
無闇に遊んでいると、連れていかれるよ。
祖母はそうして、おぶった私に
夕焼け小焼けをうたってくれた。
あれから池のほとりは随分変わり、
一時いなくなっていた川蝉が、また姿を見せるようになった。
その宝石のような青さに惹かれて集まった人だかりを抜けて、
かつておぶられた橋の上で、川蝉の高く澄んだ鳴声を聴いていた。
木々が葉を落とし始め、鳥たちが姿を消す頃、
ここも今より寂しくなって、
しばらくは眠るように静かになるのだろう。
それまで少しの間、この賑やかな暖かみに
両手の平をあてていたい。
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