月
――沼沢から溺れる、足は引き摺られ、
見上げれば、そこがいかなる穴とも知らず、
あれは月だ、美しい月だよと、信じた、
瞼が鉄に焼けるように熱い、 息を吸うことは、 息を止めることよりも、苦しく、
四日四晩苦しみぬいた祖母の袂に、 汚された箸を供える、
すすり泣き、
膝から下を漆喰の川に委ね、 よく堪えたねえ、よくないだねえ、
何遍も声をかけ、焚かれる香の、 微かな弛みを浴び、また頬を濡らす、
沼沢に集まるかの群れ、
あれは鷺かな、それとも、
未だ乾かぬままに、 淡い期待を寄せた、あれらは、・・・・・・
いや、もうよそう、 夜の間は、こうして、
月の穴に溺れることだけが、 唯一の温もりなのだから、
彼岸花
せっかくのお誕生日ですから、 奇麗な絹に身を包んで、
ほら、たまにはお化粧だって、
そういう遠慮ばかりしていると、 居間の鬼が笑うのよ、
これ使い古しなんだけれどね、
元々は、おばあちゃんが自分の着物を、一糸、一糸、ほどいてねえ、
末っ子だった私のために、よおく縫い直してくれたのよ、嬉しかったわあ、
お姉ちゃんたら、顔を赤くして、
ずるい、ずるいって言うの、
でもお姉ちゃんたちは、普段から、新しいお洋服を買ってもらっていたから、
私は、いっつも、 お姉ちゃんたちは、ずるいって、
私も、赤い靴履きたいって、 駄々をこねたんだから、 お相子よね、
立派になって、 おばあちゃんにも、よく見せてあげて、
ほら、 あなたの孫が、こんなに大きくなりました、
どこに行っても、 恥ずかしいことなんて、何一つないんだから、
胸を張って、しゃんと、歩いておゆき、
おばあちゃん、 一緒に喜んでくれているね、きっと、
惨
驕り翳り、浅まし、十の輩、 己が膿、咎、人、判判判、
泥に塗れ、 堂を歩む、滅、信を裏切り、 腹の底で発芽し、臆す、
風し斑、 四方族、天地反転、崩落、我、 膳安息、界隈、
訛、権化の説戒、 不病を諭し、修羅売買、 繁茂野生と枯渇道徳より集り、窮地、
判を押す、
澱まれ、道化の雫、呪詛、 朱の嗚咽、開墾憚る、無惨惨、
鯱の虚像、恫喝、藪祈、生え、 帳尻に化、敬う喪の共、頂まで負い、
攫え、八つ目、贅脆贅脆贅脆贅脆、 和の営み、接ぎ枝、虚虚、
業坂に、流転、切磋、 禁じ手を破り、嫁入前に没す、畜生の群れ、
惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、
逸る憶測、警戒、凡、 牢悦に唆し、欠伸惑い、非の打ち所、耽々と、
暮煙昇る、縄、葦原焼き、 目下修繕、産湯に浸かる混沌、慈円芳し、
茫々、豫物、蛇と狼煙、 不知火恃み、燻らす、庵篭り、劫、嚥下す、
謂れ、詭弁跋扈に調印、 煮え滾る報復、存、飛沫し、恍惚と縫合、
因とり、諏訪凪、王の爪剥し、 邪な陣、踏み入らず、叙事或る事に、
蹂躙、憩い貰、法資質を間欠泉とし、 鰥夫、卿奪奪奪、卑屈に、卑劣に、
宵、不審を貪り、凶兆、淵から、 息吹く鳥居、方位、子の徘徊、愉快、
さて劣等、障壁に囲まれ、銅鐸、 手締め、諦め、舞う、憐れめ、憐れめ、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、
判を押す、押せ、判判判、 拇印、判、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、
判を押す、押せ、押せ、判判判判判判、 調印、密接、
惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、
判を押せ、押せ、 押せ、押せ、判判判判判判判判判、
割印、金の流鏑馬、
印、
束の間
擡げる菜の首摘み、籠は満たされる、
日浴み葛よ、訥々と煽てられる、
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