「ごめん、また出張。今度は佐賀のサティスファクションセンター」
電話をしながらロッカールームのロッカーにもたれかかる。嘘をつくのに抵抗はなかった。子どもの頃から父に怒鳴られたくなかったから必死に嘘をつくスキルを磨き上げた。嘘は馬鹿にはつけない。嘘をつくたび頭が良くなり、おかげで大学に進学できた。父には感謝している。
手には日本酒のビン。咲夜へのプレゼントだ。
「また出張?」
「ホントよ」
淡々と言うと和也は黙り込んだ。和也はもうメキシコシティから日本に戻り、今はわたしの家から毎日平塚の大学へ通勤している。どうやら暇になっているらしく、わたしが帰るといつも家にいる。
「じゃあ、わたし、忙しいから」
電話を切る。
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