サティスファクションセンター

サティスファクションセンター(第2話)

眞山大知

小説

20,028文字

『地球上すべての顧客の満足――サティスファクションに貢献する』というミッションを掲げる超巨大eコマース企業・ヘルメス。ヘルメスの日本法人に勤めるエンジニア・音羽芽衣は、東アジア最大を誇る物流倉庫・小田原サティスファクションセンターで働きながら人生に迷いだす――。運命に立ち向かうバリキャリの破滅劇!

「ごめん、また出張。今度は佐賀のサティスファクションセンター」

電話をしながらロッカールームのロッカーにもたれかかる。嘘をつくのに抵抗はなかった。子どもの頃から父に怒鳴られたくなかったから必死に嘘をつくスキルを磨き上げた。嘘は馬鹿にはつけない。嘘をつくたび頭が良くなり、おかげで大学に進学できた。父には感謝している。

手には日本酒のビン。咲夜へのプレゼントだ。

「また出張?」

「ホントよ」

淡々と言うと和也は黙り込んだ。和也はもうメキシコシティから日本に戻り、今はわたしの家から毎日平塚の大学へ通勤している。どうやら暇になっているらしく、わたしが帰るといつも家にいる。

「じゃあ、わたし、忙しいから」

電話を切る。

2024年5月1日公開

作品集『サティスファクションセンター』最終話 (全2話)

サティスファクションセンター

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© 2024 眞山大知

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