成城石井のには20個数入っており、コストコのには45個数入ってる。シュリンプカクテル。
どちらのそれにもチリソースが付いてくる。だからそれにつけて食べる。シュリンプカクテル。
Googleなどでその用語を用いて検索すると、小エビのカクテルと出てくる。小エビをドーナツ状に配置する。その様を見ると私はいつも石の塔の事を思い出す。何故なのかはわからない。この二つは全然違うものであるはずなのに。材質も。色味も。質感も。形状も。なにもかも。それなのに思い出す。いつだったか何かの本で読んだ。どこかの、たしか京都だったと思う。京都アバンティ前にある薄い、ステンレスだったか、の薄い板を少しずつずらして積み上げて作られている塔。上部に余計な時計が付いている。オブジェ。あれを思い出す。シュリンプカクテル。
クラシルなどのサイトに行けば、作り方が掲載されているページがある。シュリンプカクテル。でも成城石井のもコストコのもクラシルで紹介されている様にして作るのではない。私が作っている。職場で。成城石井のもコストコのもどちらも私が勤務している職場で作られている。あれは作業場で作られている。シュリンプカクテル。
職場の建屋は滋賀県にある琵琶湖研究所を参考に造られたそうだ。ただしそれとは上下が逆転している。琵琶湖研究所は地上三階建ての建物だそうだ。こちらは一階だけは地上になっているが、後は地下になっている。一見すると平屋の工場に見える。一階部分は出来上がった製品をトラックに積み込むなどの作業が行われる場所になっている。また製品を作成するための資材の荷下ろしも行われる。ビニールラップで巻かれたパレットに乗ったそれはフォークリフトで荷台から降ろされて、業務用エレベーターの前まで搬送される。そこからハンドリフトを使ってエレベーターに乗り、地下一階に運ばれる。地下一階は大部分を調理場が占めている。広さはまあ、ジュラシックパークの一作目でラプトルに追われた子供達が逃げ込んだ調理場位の大きさをイメージしてもらうとよいと思う。その他に運び込まれた資材の保管庫や、地下従業員のロッカールーム、休憩室なども備わっている。地下作業員は出社するとまずこの地下一階に集まって、作業服に着替えて朝礼を行う。そして地下二階がシュリンプカクテルの制作現場となっている。地下一階から更に階段を下りると左右に通路が伸びている。どちらも端まで行くと道が九十度曲がり、そこに頑丈な、耐火倉庫のようなエアシャワー室がある。そしてそれを抜けると地下作業員の作業場所になる。地下二階はカタカナのコの字のような造りになっている。縦棒の真ん中に階段がある。そして右が成城石井のシュリンプカクテル制作現場で、左がコストコのシュリンプカクテル制作現場となる。
毎日、その作業場にそれぞれ三十名程の作業員が配置される。作業場の真ん中には溝が走っており、その溝を前にしてこちら側あちら側、右岸、左岸と市松模様みたいに作業者が並ぶ。それぞれの作業者の前の溝にはコンビニのフライヤー機器のような設備が、それは溝の中に、地中に埋まるようにして備わっている。作業者はその前に一人一人と座る。釣り堀に来た客のように地中に埋まった四角い空間を前に座って作業を行う。各作業者の左脇にシートパントローリー。ステンレスワゴン。美容室にあるような六段の足にキャスターのついた台が置かれている。これ、ワゴンの棚は一段毎に取り外せるようになっている。それとビニール袋の束もひっかけるようにぶら下がっている。右脇にはコードにつながった押しボタンスイッチボックスモメンタリーがあり、その台座に四つのボタンが付いている。一つは注水ボタン。一つは排水ボタン。一つは振動ボタン。一つは緊急ボタン。緊急ボタンは誤って押さないようにプラスチック製のカバーが取り付けられているが、ほとんどのカバーは既に外されており、紛失したり、破損してしまっている。それから作業場に入ってすぐ右手の壁に、金庫のように厳重なエアシャワーから出てすぐの所に食品用の小型のエレベーターがついてる。
成城石井棟もコストコ棟も五十名程の作業員を収容できるが、大体いつも三十名程で作業は行われる。繁忙期、例えばクリスマスシーズンやお正月に向けての時は人員が増えるが、それでも四十名になる程度だ。聞いた話では五十名MAXは人員が集まらないらしい。日々ここで各地下作業員がシュリンプカクテルの制作を行う。日によっては作業者が三十名集まらない時もある。そういう場合は残業の要請が出される事もある。
出勤してロッカールームで着換えて朝礼を行った後、その日の業務を行う為に地下作業員は地下二階に降りる。階段を下りた正面にその日の編成表が張られている。今日はコストコ棟とか今日は成城石井棟とか、それから席、入口に近い手前側か、コの字の端の奥側か。やはりと言うべきか、奥側は人気が無い。地下二階には出口が一つしかない。地下二階に降りるための階段だけ。あと業務用のエレベーターもあるが、非常時それが正常に機能するかどうかはわからない。食品用のエレベーターは小型である為、人間はなかなか入れない。小柄な人なら入れない事もないだろうが、もし何か起こって途中で停まれば、その狭い中に長時間閉じ込められることになる。多くの作業者は手前側、エアシャワーに近い席を希望する。作業者同士で話をして若干の席替えをしたりする事もあるらしい。
地下作業員はエアシャワーを抜けた食品用エレベーターと反対側の壁に備わっている菜箸やトングを持つと、各々の作業場所に着席する。左側にあるステンレスワゴンの一段一段に小瓶が置かれている。その小瓶はそれぞれA薬、B薬、C薬という名称で呼ばれている。色味もそれぞれ異なり、A薬が赤、B薬が青、C薬が黄色となっている。それがステンレスワゴンの各段に、成城石井棟なら五本ずつ、コストコ棟なら十本ずつ置かれている。小瓶の大きさは全部一緒。ただコストコ棟、成城石井棟で瓶の内容物に若干の違いがある。瓶の中に入っている薬は粉末になっているが、その粉末の大きさ、粒の大きさが異なる。成城石井棟のものに比べてコストコ棟の方は粒の方が大きい。瓶の大きさ自体は変わらない。どちらも紅茶の、紅茶一杯分の茶葉が入る小瓶と同じくらいの大きさである。
作業に入る前にまず各々で小瓶の数を確認する。間違いがないかどうか。全部同じ本数準備されているだろうか。一段一段しっかりと確認する。ワゴンに引っ掛かっているビニール袋の束も確認する。残り枚数に不足はないかどうか。溝の中に埋まっているフライヤーの状態も調べる。網の取っ手が外れないかどうかとか、網が破れていないかどうかとか。溝の中に異物、汚れはないかどうか。異常がないかどうか。メモリの線が目視で見えるかどうか。それらを一通り確認し問題が無ければシュリンプカクテル制作作業が開始される。
フライヤーの網を持ち上げてから目の前の四角い穴、溝の中にA薬を入れる。瓶の容器と蓋は、蓋を開けても外れない仕様になっているが一応落とさない様にも注意する。それから注水ボタンを押す。するとその四角い溝、穴の中に海水が入り込んでくる。そのまま海水を溝のメモリの所まで入れて持ち上げていた網を下ろす。A薬の入った海水は赤く染まって若干泡だっている。そのまま少し、一分ほど定着を待つ。A薬と海水の定着である。その時菜箸やトングを用いて無暗にかき混ぜたりしてはいけない。それから赤く染まった海水の中にB薬の瓶の中身を入れる。B薬を入れ、それが全部、すべて表面の水に溶けたのを確認してから、それからゆっくりと菜箸、トングなどで水をかき混ぜる。あまりかき混ぜる必要はない。ゆっくりと四、五回程度大きくかき混ぜたらそれでよい。それだけで赤かった海水の色は変化していく。何とも表現、形容しにくい色味に。溝の底は、水の底はもう見えなくなっている。深さは50センチくらいしかないが一切、全く見えなくなる。そしてその液体の中に、最後にC薬を入れる。C薬を入れて、それが溶けていく、溶けたのを確認して、こうなったらもうかき混ぜたりしてはいけない。それから振動ボタンを押す。すると四角い溝、その中の海水、海水だった液体、何色と言っていいのかもわからない液体が細かく振動を始める。そうしてC薬が混ざった事によってまた液体の色味が変わっていく。また、得体のしれない色に。振動は溝自体がそのような構造になっているために起こる。ちなみに、成城石井棟とコストコ棟ではこの部分も若干異なる。成城石井棟の方が穏やかに振動し、コストコ棟は少しそれよりも大きく揺れる。どちらの場合にしても水が跳ねたりすることがある為、目や口に入ったりしないように注意する。手に付着したりするのも注意する。振動は三分ほど続く。終わった時は自動で止まる。それからゆっくりと網、セットしていたフライヤーの網を上げると、そこ、網の底面に海老の剥き身が散らばるように、見ていない一瞬の間に誰かが溝にばら撒いて行ったんじゃないかと思うように存在、発生、誕生している。網を上げてから排水ボタンを押す。得体のしれない色味になった液体は排水される。この排水は道を挟んで向こうにある排水処理場に直接流れる。そしてそのまま排水処理をされる。という噂があるが実際の所はどうなのか知らない。排水が全部なくなってから再び注水ボタンを押す。溝の中に海水を満たしそしてまた排水ボタンを押す。洗浄工程である。その間に網の底に溜まった剥き身の海老をビニール袋に入れる。素手ではなく、菜箸や、トングを使う。一度目の排水が終わるまでにすべての海老をビニール袋に入れ、網も洗浄工程の際に溜める海水に浸す。その際に気になるなら、トングや菜箸も一緒に入れる。ただし排水の時は必ず網、菜箸、トングは取り出しておかなくてはいけない。以前入れたまま排水を押して菜箸が排水穴に詰まったという事故があった為だ。一回の行程が、約十分。成城石井棟は一回で約25個数が発生し、コストコ棟は一回約50個数発生する。海老。シュリンプカクテル。剥き身の海老。一時間に五回転。ステンレスワゴンの棚一段分。一段毎に食品用エスカレーターに乗せる。
こうして一日八時間、地下作業員は海老を制作し続ける。一段毎に食品用のエレベーターに乗せ上階の調理場に送る。調理場ではビニール袋にそのまま真水、ここでは蛇口から真水が出る。真水を入れて洗い、そして成城石井、コストコの容器に入れて行く。成城石井は容器にある半ドーナツ型の溝にひっかけるようにして並べそして真ん中にチリソースを配置する。コストコのも昔はそうだったが、昔はドーナツ型の容器だったが、今はばらばらに入れている。レモンの切り身を二つ、そして真ん中にチリソース。そうして蓋をして冷凍車、冷凍設備のあるトラック乗せられて出荷される。ゆえにコストコ店舗では一部の食品の調理工程が見えるようになっているのに、シュリンプカクテルの調理工程は存在しない。どちらも一日二日程度で食べるようにとなっているが、実際は五日ほどもつ。成城石井のシュリンプカクテルは海老が小ぶりというか、マルっとしていて凹凸の少ない形をしている。コストコのはそれに比べると大きく、多少凹凸もある。これはそれぞれの作業棟の振動の強弱が原因で起こる変化、現象である。詳しくは知らないし、別に詳しく知る気も無いのだけど、海水の量に対して薬の量が決まっているのだそうだ。ゆえに成城石井のシュリンプカクテルに比べるとコストコのは少し荒々しい。コストコのは二瓶ずつ使うから、あと薬の粒の大きさが大きいからだそうだ。こんな風にちまちまとではなく、もっと大量の海水を用いて大きな施設で一気に作ろうとした事もあったらしいが、その時に大きな事故が起きたとかそれで人が死んだとか、そういう噂があるらしい。本当かどうか知らない。また、この粉の正体についてもある噂がある。星新一のショートショートの中に砂漠に置かれた宇宙人の卵型のカプセルの話がある。話の中ではその卵は結局まあ、あれになってしまったけど、実はそうじゃなかったんだそうだ。その卵はどっかの軍か何かに回収されて開けられており、その中に、宇宙船の設計図とか若返りの薬とかと一緒にこの粉もあったとか。いやいや、それこそ嘘だろう。
このシュリンプカクテル制作工場は全国に何個かあるらしい。しかしこれも噂だ。事実なのかどうかはわからない。ネットで調べても出てこない。そこに努めている社員の話なども出てこない。退職者の話も、SNSにも一切。何も出てこない。社外に出たら職場の話はしてはいけないとは言われているが、それにしても一切何も出てこない。不思議に思うほどに何も。
職場の給与面はとてもよい。が、離職者もとても多い。特に仕事が厳しいというわけでもない。一時間で五回転。海老、シュリンプカクテルを作っていればいい。何かハラスメントがあるわけでもない。と思う。少なくとも私にはない。一蘭でラーメンを食べる時のように地下作業者は基本一人だ。週休二日制の土日休み。繁忙期に土曜日がたまに出勤になる事もあるが、そういう時の土曜日は八時間全部が25パーセント増しだし。普段の出勤時に残業したとしてもその分もちゃんと出る。交通費も出る。作業着はいつも洗濯されたものが個々のロッカーに入っている。あまり頻繁ではないもののまあ少々の昇給もある。有給休暇の取得にも好意的な職場だ。昨今ではとても優れていると言ってもいいのではないかと思う。それから日曜日に出勤になる事はない。絶対にない。日曜日は地下一階の調理場と地下二階全体に洗浄滅菌が行われる為である。
私も今のその職場で働いて……あれ、最初どうやってこの職場を知ったんだっけな……。
その作業内容が肌に合っていた。んだと思う。気が付けば、現在、地下作業員として勤続年数が一番長いのは私だという。それでも三年だ。でもそれだからなのか、私はいつも大体、一番端、入口から一番離れた奥の席に配置される。成城石井棟でもコストコ棟でも。まあ別に不満はないのだけど。
最寄り駅、浦和駅から職場までは、片道二時間かかる。家からのdoortodoorだともう少し。でも特に何も感じない。読書や音楽、ストリーミング視聴しているとすぐに思える。またこういう生活になった為に、読書やドラマ、映画の試聴が以前に比べても出来るようになった。それが私にとって嬉しみである。金曜日は何だったら、どこかのビジホなり、ネカフェに泊ってしまってもいい。カプセルホテルでもいいし、朝までやってるサウナに行ってもいい。今の職場で働くようになってから、東京くんだりのそう言った事にも詳しくなった。
しかし、私はなにでこの職場を知ったんだっけな……。
私よりも全然近いところに住んでい人達が辞めていく。特に誰ともそんなに親しい交流をしていたわけではないが、ある人は、ここの職場はおかしい。と言った。ある人は、もうシュリンプカクテルは買わない。と言った。ある人は、絶対に変だ。あれでシュリンプカクテルが出来るなんて。何かおかしい。絶対におかしい。と言った。ある人は、作業を行っていて時々頭がおかしくなりそうになる瞬間がある。と言った。ある人は怖いと言った。あの水が怖い。と。溝の中に満たされる水が怖いと。夢に出てくるんだと。そう言った。
「あの水から、A薬、B薬、C薬を入れた後の水から、手が出てくるんです」
ある人は、足だった。人間の足ではなく。何か違う何かの足。ある人は見たことも無い顔が浮かんでくると言った。ある人はバラバラになった何かが浮かんでくると言った。あの得体のしれない色の水の底から。あの中から。
ある人は、
「大きな海老の怪物が顔を出すんです」
と言った。それが、あの狭い溝の中から出てきて、その伸びた手で、手長海老だろうか。周りにいた人間を誰彼構わず刺し殺してしまって、そして最後には、
「僕の首を切断するんです」
そう言った。その夢の中で、巨大なその海老から逃げ切れたものはエアシャワーの中、ガラスの向こうから、ドアの向こうから、その瞬間を無表情に見ているんだという。
私は作業を行っていて怖いと思ったことはないし、そんな変な夢も見ない。生活水準が上がったからやったぜって思ってる。他には読んでる本の続きとか、ドラマの続きとか、あと水カンのラオウの事とか。各薬の入ってる瓶の事を紅茶が一杯淹れられる茶葉が入る大きさの瓶と言った。だから、薬が水に溶ける時、私はいつも無印良品で買った透明なポットの中で葉をジャンピングさせる紅茶の事を思い出す。そしてそれと同じことを水カンのラオウを聞いている時も思い出す。ラオウの曲の中にはピアノが入っていて、そのピアノを聴いているとまるで指が跳ねて演奏している様に思える。そういうイメージがいつも頭の中に湧く。コムアイの歌の邪魔はせず、しかしセカンドボーカルの様に、歌が途切れた間奏になるとピアノが跳ねまわる。ラオウの曲の中でピアノが跳ねまわる。それがジャンピングを連想させる。そういう事しか考えていない。
業務が終わって浦和駅に帰ると成城石井に寄る。浦和駅には成城石井がある。そこでシュリンプカクテルを買う。買う時に海老の数を数えたりする。たまに21個数入ってる事がある。そういうのを見つけるとニヤニヤしてしまう。週末は新三郷のコストコにも行く。シュリンプカクテルとサーモンやらブロックの牛肉やら馬鹿みたいなサイズのティラミスを買って家に帰って調理したり食べたりする。スパークリングワインも買う。シードルも買う。たまにズブロッカとかも買ったりする。
職場から交通費が出ているので定期で行ける所も増えた。破滅派さんの現地合評会の時も定期で、最寄りじゃないけど、近くまでは行けるし、東京文フリが開催される東京流通センターも定期で賄える。
でも、どうやって今の職場を知ったんだっけな。なんでそこで働く事になったんだっけな。
まあ、なんで今の職場で働くようになったのかは忘れてしまったが、毎日楽しく暮らしている。
海老の怪物なんていない。が、津原泰水さんの幽明志怪シリーズの中にカルキノスという話があるから、蟹の●●の話だ。だからそれにあやかって、私はそれを自分の脳内の中だけでシュリキノスと名付けて呼んでいる。
エビラではない。昭和シリーズのゴジラはゴジラがいい奴みたいな感じがする。愛嬌がある。それが好きになれない。ミレニアムシリーズもなんとなく好みじゃない。平成シリーズが好きだ。平成シリーズにエビラは出ない。だからエビラじゃない。シュリキノスと呼んでいる。
シュリキノスの由来は、カルキノスと、それからカルっていうのが1999年の韓国の映画にあって、その同じ1999年にシュリっていう韓国の有名な映画があるから。だからカルの代わりにシュリ。シュリキノス。シュリ自体は観たことない。シュリンプのシュリじゃない。ただ、カルの他にシュリがあったから。1999年という年代にも何の意味もない。韓流の事は特に何も知らない。ただの偶然だ。
あと最近、読書の形態を紙媒体からkindleに移行させた。だからAmazonさんにお願いしたい。津原泰水さんの幽明志怪シリーズをkindleで販売してほしいんです。今一番願っているのはそれだ。Amazonさんお願いします。お願いだから。
会社で行われる一年に一回の健康診断の際、最後に医師との問診があって、その時、
「ちょっと猫背、あー、ストレートネックかなあ」
と言われた。ストレートネック。スマホ首。スマホを見すぎることで起こる現代病。最近流行りだからなのか、医師はすぐに資料にとぺら紙を一枚渡してきた。症状、首、肩の凝りや痛み 、頭痛 、手のしびれ 、めまい 、吐き気等。
「スマホすごい見てますか」
「そうですね。移動時間があるんで」
職場までの移動二時間、帰りの移動二時間、私はずっとスマホを見てます。
「ちょっと見せてもらえますか」
すると医師が丸椅子に座ったままの私の横に立って、
「あらー海老みたい。海老みたいになってます。もうストレートじゃないな。え、これ、もっと……海老みたい……」
と言った。会社の健康診断とは言っても医師は私の仕事の業務内容なんて知らない。余計な事は言ってない。会社だって言わないだろう。最初に書かされた問診票の職業欄にだって構内作業員としか書いてないのに。その時ちょっとだけ職場の事を思った。やめて行った色々な人が言っていた事を思い出した。怖い。とか、海老の怪物シュリキノスとか。そういう事をちょっとだけ連想したり、考えたりした。あと津原泰水さんの幽明志怪シリーズの中に猫背の女っていう話があるからそれの事も思い出した。考えた。kindleになってほしいなあって。
あ、そう言えば、なんか突然思い出したけど、昔あの職場でなんかの事故が起きた事があったような。あれ、なんだっけな。あれ。なんか、何だっけ、あれ。
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