日の塵(第2話)

消雲堂

小説

839文字

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1.

早朝、かみさんがごみ捨てに行ってしばらく帰ってこなかったので心配になって見に行ったら階段の踊り場で、まだ生きてピイピイ鳴いている雀の雛を見ていた。昨日より元気がなさそうだが、嘘をついていたのがばれてしまった。

2.

雛は、また僕たち夫婦の部屋の傍にやって来て鳴いている。見れば、かなり衰弱している。羽が短いから飛べないのだろう。多分、生まれつきのものだ。それにしてもなぜ、また近くまでやってきたのか? 僕は冷たい人間だから水をあげただけだ。これから出かけるから、雛はその間に死んでしまうだろう。カラスに食われることがなければ、丁寧に葬ってやろうと思う。

3.

雀の雛はカラスにやられてしまったようだ。
帰ってみるとアパートの廊下あたりから数羽の雀が飛びたった。
その中に雛がいることを期待したが・・・。
朝、雛がいた場所には、ちぎり取られたような雀の羽がたくさん落ちていた。
出かける際にピイピイ鳴いていた姿を見たのが最後になった。

かみさんの僕に対する冷たい視線が怖い。
「だから保護してあげればよかったのに・・・」という視線なのだ。

4.

朝、目の前の藪にカラスが10羽くらいやって来て大騒ぎしていた。見れば、尾長が数羽カラスたちに体当たりしている。傍の電信柱には野鳩や雀も止まっている。藪の中には尾長のほかに野鳩や雀の巣があるのだ。この間まではヒヨドリの巣もあった。昨日の雀の雛で・・・言葉は悪いが味をしめたのだろうか?

今日はごみ収集の日ではないから、毒ばかりなくせに美味い人間の残飯を食らうことができないので、小さな卵や雛で腹を満たそうというのだろうか?

ベランダで彼らをいまいましく見ていると僕の後頭部あたりで「ブーーーーン」という羽音がした。振り返ると本当に間近に大きなスズメバチが空中浮遊していた。彼と目が合って後悔した。黒いポロシャツを着ていたからだ。黒いものを本能的に攻撃する彼らもカラス同様に野蛮で残酷な生き物だ。

しばらく睨み合って・・・昆虫界のカラスは堂々と何処かに去っていった。

2014年6月10日公開

作品集『日の塵』第2話 (全3話)

© 2014 消雲堂

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