夫婦

かきすて(第36話)

吉田柚葉

小説

1,573文字

今週からかなり冷えるらしいです。気をつけましょう

夏やすみにプールでおぼれて男の子が死んだらしい。となりまちの小学校でおきたことなので、ぼくの耳にはいるまでにすこしじかんがかかった。
「かわいそうに」

という妻の声はいかにも悲痛だ。
「ほんとうにね」

と、ぼくはいごこち悪く、こたえた。てもとのビールがはいったグラスに、しぜんと手がのびた。

妻が不妊治療をはじめて、半年がたった。まだ結果はでていない。子どもの話題は、なるべくならさけたかった。

妻がさきにとこについた。

ぼくは書斎で、エッセイのつづきを書いた。『ソーシャルディスタンスの時代』というテーマで、いまさらぼくに何を書けと言うのか、すこし書いては消して、すこし書いては消してをくりかえした。
「ことに子どもたちは」

と書いて、さきがつづかない。子どもたちについて、ぼくにはおもうところがなかった。

死んだ子について、かんがえた。どんな子だろうか。妻によると、四年生で、なんでも、ハーフの子だということだが、ずいぶんと水泳がとくいだったらしい。それが、おぼれ死んだ、ということだから、なぞに感じる。

2021年11月21日公開

作品集『かきすて』第36話 (全40話)

かきすて

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© 2021 吉田柚葉

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