其れから一週間後、レターパックで小包が届いた。差出人は岡本尊文。見慣れた氏の筆致で私の宛名が書かれている事に少しは心動かされないでは無かったが、やはり不気味さが勝った。感情が渦巻いた。
果たして中は、尊文の新刊本であった。題は『真冬の炎』。五〇〇頁超の大作で、発刊日には、「二〇一九年一月二十五日」とある。未だ発売前らしい。
ともあれ気になるのは、帯の裏表紙面にある「『ユリアヌスの休日』から二十年越しの続編! 小説家岡本尊文が新たに世に問う問答無用の大傑作!」と云うヘタクソな作品紹介である。「小説家」と云う言葉は削った方が好い気がするし、「問」と云う字が近しい処に二つ並ぶのも具合が悪い。私は編集者の雑な仕事ぶりに腹が立った。見ると、出版社は城陽社である。さもありなん。しかし一応は文壇の大御所の新作なのだから、もう少し慎重に本を作るべきではないか。其れとも今の編集者にとり尊文なんぞはその程度の作家なのであろうか。
私は、虚しいおもいで本を開いた。すると、一枚の便箋が落ちた。そこには、見慣れた癖字で次のようにあった。
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