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ミランダの遺体はエンバーミングがなされており、腐敗は未処理のものよりも遅れる。とは言え、人の体はいずれ朽ちる運命にある。彼女の肉体も子飼いのプレジデンツとともに、段々と崩れていった。
埋葬から九十三日目。最初の犠牲者は案の定ウィリアム・ハリソンだった。彼は右乳房の肩寄り、ホクロの横にいたが、紫に変色して顔がわからなくなった。
九十五日目。右乳房の腐敗が速い。ミランダは薄衣をまとっていたが、元の重さがあるだけに、腕の方へ行こう行こうとしていた。右乳房の外側にいたのは、リチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ、ドナルド・トランプだった。彼らは茶色になり、満面の笑みもかすんでしまった。肌の表面がしぼむにつれて、ブッシュ親子は頬を寄せて同化していった。
百日目。左乳房が右乳房に追いついた。内側にいたアンドリュー・ジョンソン、そしてジミー・カーターの顔が、下へ引っ張られたようになった。
百一日目。アンドリュー・ジャクソン、ジェームズ・モンロー、J・Q・アダムズ。ジャクソンは左乳輪の下方、モンローはその左隣に位置し、アダムズは右乳輪の右方にいた。ジャクソンが先に崩れ、あとの二人が腐ったのはほぼ同時だった。
同日夜。右の乳房にいたスティーブン・G・クリーヴランドが没した。二つの顔を持つ彼は、乳房と腹が癒着して見えなくなった(なお、この付近には、ハリー・S・トルーマンやフランクリン・ピアースもいた)。
百二日目。ジョージ・ワシントン、トマス・ジェファーソン、エイブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズベルトのラシュモア組が変色した。
百三日目。カルビン・クーリッジ。
百四日目。ユリシーズ・グラント、ジェームズ・ブキャナン、マーティン・ヴァン・ビューレン。顔がしなびる。
百五日目。両乳房が外側へさらに開いたため、そこにいた大統領が確認しやすくなった。左はジェームズ・マディソンとウッドロウ・ウィルソンが脱落しただけだったが、右はジョン・タイラー、ザカリー・テイラー、ウォーレン・ハーディング、ドワイト・D・アイゼンハワーの四人が茶色くなった。
同日夜。ラザフォード・ヘイズ、ジョン・アダムズ。そしてジェームズ・ポークがしなびた。
百六日目。ミラード・フィルモアとハーバート・フーヴァー。
百七日目。右乳房の縮小が始まり、それまで持ちこたえていたジェームズ・ガーフィールド、チェスター・アーサー、ベンジャミン・ハリソンがくしゃくしゃに丸めた紙のようになった。
百八日目。震度五強の地震発生。遺体も揺れ、リンドン・ジョンソン、ビル・クリントンのいる皮がめくれた。
百九日目。ウィリアム・マッキンリー、ウィリアム・タフト、バラク・オバマ、ジョン・F・ケネディ。亀裂、分断、剥落。
百十日目。しぶとく生き残ったフランクリン・ルーズベルトも左乳輪の上方で、広い額がうっすらと見えるだけだった。プレジデンツは全滅したが、この日のミランダの顔にはまだ生前の面影があった。
(備考)
落伍した大統領の順番を数字で表すと次の通りになる。
9→37→38→40→41→43→45→17→39→7→5=6
→22(24)→24(22)→33→14→1→3→16→26→30
→18→15→8→4→28→10→12→29→34→19→2
→11→13→31→20→21→23→36→42→25→27
→44→35→32
〈了〉
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参考サイト
歴代アメリカ合衆国大統領の一覧:https://ja.wikipedia.org/?curid=1153192
フロリダ州:https://ja.wikipedia.org/?curid=36907
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