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ピーノくんがみたゆめ

破滅派25号「児童文学」応募作品

藤城孝輔

『破滅派』25号(特集:児童文学)応募作。対象年齢:小学校2年生くらいまで。

タグ: #破滅派25号「児童文学」

小説

8,231文字

ある、あつい日のことです。ピーノくんはガッコーのかえりでした。川ぞいのコンクリートのみちのさきにユラユラとゆげがたって、ケシキがまざりあうエのグのようにとけてみえます。たいようがピーノくんのあたまのうしろをずっとやいているせいで、あたまのナカミまでフットーしそうです。

ピーノくんはガッコーからいつもひとりでかえります。ピーノくんのクラスのおともだちは、だれもピーノくんと一しょにかえりません。みんな、ピーノくんがよそものだといって、なかまはずれにするのです。でも、ピーノくんはうまれたときから、みんなとおなじまちでそだちました。ピーノくんという、へんななまえのせいかもしれませんね。

オカーサンに日やけどめをかってとおねがいしてみよう、とピーノくんはおもいました。クラスでは、ジョシもダンシもなつにはまい日、日やけどめをぬるのがあたりまえです。ヒフがんになったり、はだにちゃいろいシミができたりするから、日やけはキケンだとみんなはいいます。ピーノくんはなつでなくても、みんなよりずっと日やけしているから、みんなとおなじように日やけどめをぬれば、よそものだといわれずにすむかもしれません。でも、あたまのうしろも日やけをするのかな? まるボーズにしたことのないピーノくんにはよくわかりません。

「ねえ、ボーシもかぶらないで、あつくないの?」

目のまえがさっとくらくなると、あたまの上からおんなのひとのこえがしました。

ピーノくんが上をみると、せのたかいおんなのひとのかおがピーノくんをみおろして、わらっていました。くろいワンピースをきた、オカーサンとおなじくらいの年のやせたおんなのひとです。といっても、ピーノくんにはおとなはみんなオカーサンとおなじくらいの年にみえたので、ひょっとしたらもっと年上なのかもしれません。おんなのひとはじぶんの日がさのなかにピーノくんを入れて、かげをつくってくれていました。日がさのおかげで、おんなのひとはなつなのにまっ白なはだをしていました。たぶん、日やけどめもたっぷりぬっているのでしょう。

「日なたにずっといると、日シャビョーになっちゃうよ」

と、おんなのひとはピーノくんにいいました。うちがわにくろいぬのがはられた日がさは、そこだけアオゾラにあながあいてウチューにぬけていくみたいでした。日がさのしたは、ウソみたいにひんやりしています。

「日シャビョーになると、うごけなくなってしんじゃうことだってあるんだから。ちょっとすずしいところでひとやすみしていきましょう」

「ひとやすみ?」

「そう。キンキンにひやしたジュースをのんで、おかしをつまみながら日ざしがやわらぐのをまつの。あと一ジカンもしたら、日もかたむいてすこしはすごしやすくなるから」

「でもオカーサンが、よりみちしないでかえってきなさいって」

「オカーサンはおしごとだよね? おうちにかえっても、ピーノくんがねるまでひとりぼっちでしょ?」

「そりゃそうだけど……なんで、しってるの?」

「ピーノくんのことなら、なんでもしってるわよ。ピーノくんのオカーサンみたいに、フシダラなおしごとをしてるよそものと一しょにくらしてたら、ピーノくんまでダラクしちゃうわ。ピーノくんはギャクタイってことば、きいたことある? ねえ?」

あたまの上のくらやみのなかに小さくかがやくテンテンがみえてきました。ウチューのホシたちです。ホシたちはあやしくひかりをはなちながら、

「おいで、おいでよ。おいで、おいでよ」

と、ピーノくんによびかけます。ホシたちが大きくなると、それだけこえも大きくなりました。あしのあたりがフワフワしてきて、かるくじめんをけるだけでカラダがうきあがって、日がさのなかのウチューにとびこめそうなきがします。なつのセミよりも大きくなったホシたちの大がっしょうは、いつまでもいつまでもつづき、ピーノくんのあたまのうちがわでグワン、グワンとこだましました。からだが、おなかのそこのほうからどんどんつめたくなっていきました。

そのときです。

「ピーノ! にげるんだ!」

ピーノくんは、だれかにうしろからドンとおされました。ランドセルがせなかにつよくぶつかって、ピーノくんはまえにころびそうになりました。

「はしれ! とまるな!」

おとこのひとのこえがピーノくんにめいれいしました。しっているだれかのこえです。ピーノくんはハッとして、とにかくまえにあしをだしました。まぶしいひかりのなかにでると、ふたたびあついクーキがピーノくんをつつみます。ピーノくんは目をつぶって、サユーのあしをまえにだしつづけました。

どれくらいはしったでしょうか。ずっとはしってきたはずなのに、川ぞいのみちはどこまでもまえにつづいています。はしりすぎたあしがもつれて、ピーノくんはあついアスファルトの上につんのめるようにころびました。

「だいじょうぶか、ピーノ?」

日やけしたふというでが、ランドセルの上からピーノくんのわきの下をかかえて、ピーノくんをたたせました。ふくについたホコリをはらってもらいながら、ピーノくんがふりむくと、カタひざをじめんにつけたケータローおにいさんと目があいました。ケータローおにいさんは、オカーサンのおともだちです。

「よかった……マジであぶないとこだったな」

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© 2026 藤城孝輔 ( 2026年9月30日公開 )

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