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鹿打

贄・鴨狩(第1話)

萩原蔵王

狩りから帰ってきた尾上兵衛、木内歌之助、佐々木浅次郎、木暮新助、砂川四郎兵衛、美濃弓之助。彼らは黙々と山を下りながら各々の苦悩を考える。

小説

3,089文字

「よぐれただ」と、帰り際に兵衛ひょうえが云った。山中を歩行あるまわっていたがために、彼のこえしわがれていた。

「うん。でっかいのが獲れただね。これでしばらくは無事だろう」歌之助うたのすけはそうかえした。

山道には、二人の他に、佐々木ささき浅次郎あさじろう木暮こぐれ新助しんすけ砂川すながわ四郎兵衛しろべえ美濃みの弓之助きゅうのすけが、皆各々の猟銃りょうじゅうを携えて──尾上おがみ兵衛と木内きうち歌之助と、佐々木と木暮とで二疋にひきの鹿を担いで──山道を黙々と歩行いていた。兵衛がそれにえ切れずに口を開いたのであった。

「畑だ」誰かが云った。全員の耳が銃声に疲れていた。

孫市まごいちは?」四郎兵衛は遠くに在る民家をちらりと見てから思い出したようにたずねた。孫市は村一番の烟突えんとつを持っていた。

© 2026 萩原蔵王 ( 2026年2月15日公開

作品集『贄・鴨狩』第1話 (全5話)

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"鹿打"へのコメント 2

  • 投稿者 | 2026-02-17 21:03

    夏目漱石とか中島敦を思わせる明治から昭和初期風の重厚な文体、令和になってから出会えるとは思わなかった。すごく嬉しい。これで旧仮名遣いで書いてあればもっと嬉しいが、それでは読む人がいなくなるのだろうな。

    貧しい村の貧しい猟師たち、口数の少ない男たちのそれぞれの「老い」への向き合い方。晩夏のじわじわした暑さ。鹿の屍(ダジャレではない)

    若干、気になる点はあるものの、断然、その心意気やよし!
    これからもどんどん発表してほしい。

  • 投稿者 | 2026-03-01 19:00

    ギフテッドみたいな文体!?
    今どき、こういう文章を書く人があんまりいないからめっちゃ嬉しい!
    鮮明に描写しているから意外とわかりやすい!
    これからも頑張ってください!

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